研究実績の概要 |
あるコードダイアグラム E から出発し,弦の展開操作を次々と繰り返すことにより,E を根とし,展開途中の各コードダイアグラムを頂点とする2分木が生成される.このとき,2分木の葉として現れる非交差コードダイアグラム全体の重複集合は,展開途中における2-交差の選び方によらずE のみで決まる. この重複集合をNCD(E)と書く.また,重複集合としてのNCD(E) の位数f(E)をE の展開数と呼び,f(E)と書く.本研究の目的は,NCD(E)の様子を知ることであるが,ここでトレミー重みを導入する.各弦e に対して,重みw(e)が与えられているとする.円周上にこの順に並んでいる任意の4 点a, b, c, d について,トレミー関係式 w(ac)w(bd) = w(ab)w(cd) + w(ad)w(bc) が成り立つならば,w をトレミー重みと呼ぶ.本研究では,トレミー重みを利用してNCD(E)を研究し,次の結果が得られた. 1. 展開の単射性:与えられたコードダイアグラムE に対して,E から展開される非交差コードダイアグラムの重複集合NCD(E)は一意に定まるが,この対応は単射である. 2. m(E,Nn)とある均衡2部グラフの完全マッチングの個数との対応:一般のコードダイアグラムE に対して m(E,Nn)は,対応する均衡2部グラフの完全マッチングの個数と等しい.ここでNnはn-ネックレスと呼ばれるコードダイアグラムである. 3. m(E,F)と三角形分割に付随するトレミー重みとの関係:T は三角形分割とし,wT をT に付随するトレミー重みとする.コードダイアグラムE と非交差コードダイアグラムF について,F⊂E(T)ならば,m(E,F)はローラン多項式wT(E)に含まれる単項式wT(F)の係数に一致する.
|