研究実績の概要 |
円周上の有限個の点集合Vを頂点集合とし,それらを両端点とする弦の集合Eを辺集合とするグラフを幾何グラフG=(V,E)という.なお,本研究における幾何グラフの定義としては多重辺は認めるがループは認めない.幾何グラフGが円の内部で互いに交差する2本の弦ac,bdを持つとき,Gにおいてac,bdをab,cd及びbc,daに置き換えて2つの幾何グラフG1,G2を生成することをGの弦展開という.与えられた幾何グラフGを出発点としてこ弦展開操作を繰り返して可能な限り行うとGのみによって決まる非交差幾何グラフの重複集合が一意に定まる.この重複集合の位数をGの展開数と呼ぶ.またGから生成される非交差幾何グラフHの個数を(G,H)の重複度という.2021年度では,主に幾何グラフの弦展開の研究を進めた. 各頂点の次数が1である幾何グラフをコードダイアグラムという.コードダイアグラムの弦展開の性質については既に研究が進められていた.特にコードダイアグラムの展開数はコードダイアグラムから自然に得られる交差グラフについてのタット多項式の具体的な値と対応することが知られている.また,コードダイアグラムの重複度はVを頂点とする凸多角形の三角形分割に付随するローラン多項式の係数で表されることが知られている. 本研究では対象を幾何グラフに拡張して調べた.幾何グラフは交差グラフとの直接の対応は無いため,コードダイアグラムにおいて得られた展開数についての公式は得られない.そこで与えられた幾何グラフGについてその次数2以上の頂点を次数に等しい個数の新たな頂点に置き換えることによりコードダイアグラムG(E)を構成しGとG(E)の展開数,重複度との関係を調べた.特に,幾何グラフの重複度も三角形分割に付随するローラン多項式の係数で表されることがわかった.
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