• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実施状況報告書

関孝和の数学の革新性に関する研究:方程式論を中心として

研究課題

研究課題/領域番号 19K03609
研究機関四日市大学

研究代表者

小川 束  四日市大学, 関孝和数学研究所, 研究員 (90204081)

研究分担者 森本 光生  四日市大学, 関孝和数学研究所, 研究員 (80053677)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード関孝和 / 方程式論 / 宅間流
研究実績の概要

関孝和(1642年頃--1708)は江戸初期の数学者(本業は甲府藩のちに幕府の役人)で,高校の日本史の教科書にも「筆算代数などにすぐれた研究成果をあげた」数学者としてその名が挙げられている.実際,関孝和は日本において「方程式そのもの」を数学の研究対象とした初めての数学者である.関の著作『発微算法』,『開隠題之法』,『開伏題之法』,『開方飜変之法』,『題術辯議之法』,『病題明致之法』,『大成算経』(のいくつかの巻)はいずれも方程式を研究したものといってよい.本研究は関の方程式論を総合的に研究し,その独創性,革新性を明らかにしようとするものである.
本年度は関流以外の流派の考察を通じて,近世日本において関の数学が「独創的,革新的」であるというときの意味を考察した.参考にしたのは宅間流の数学である.宅間流といえば,第3代鎌田俊清の『宅間流円理』が関や建部賢弘の円理と肩を並べる成果であることは夙に知られているが,その後の宅間流についてはほとんど研究がないといって良い.今回研究の対象としたのは宅間流において最も多くの著作を残した岡之只(1791--?)である.特に『起術解路法定例』および『遷式術』の内容を検討した.前者において岡は,2次方程式について,2次の係数が1の場合に一つの数値解から他の解を求める方法や,たすき掛けによる多元高次連立方程式の未知数消去の各種方法を述べ,また後者においては方程式の変形法について述べている.これらの技法を読むと,関の方程式論は宅間流に格段の影響を与えていなかったことがわかる.これは宅間流に限ったことではない.方程式論における関の問題意識は近世日本においては理解されず,また共有もされなかった.関の方程式論の独創性,革新性というのはそれを引き継ぎ発展させる者が現れ得ない孤高の成果であった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度もコロナ禍のため,出席を予定していた海外出張はできず,また日本数学会の年会など国内の会議もすべて遠隔となった.そのため多くの研究者との幅広い研究連絡をすることはできなかった.その一方で,数学史京都セミナー,数学史名古屋セミナー,編集会議などがZoomにより頻繁に開催されたことで,一定の研究者との交流はむしろ盛んであった.また岡之只の著作を所蔵されている一般の方からの問い合わせに端を発した宅間流の研究はあらためて関の方程式論の意義を見直す契機となり有意義であった.

今後の研究の推進方策

コロナ禍のため1年延長できたので,予定していた高等学校の先生向きの関係資料の作成は2022年度にさらに続けることにした.当初は中国と関流とだけを視野に入れていたが,本年度宅間流を研究したことで,一層広い視野からの記述が可能なったのは幸いである.また,『関全集』の原稿の校正も引き続き進める.

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍のため海外出張および中国からの研究者の招聘の予定ができなかったため次年度使用額が生じた.
秋の日本数学会(北大)出席,大阪における岡之只関連の調査などを予定している.ロシア・サンクトペテルブルクにおける国際会議に出席の予定していたが,戦乱のため不可能となった.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 近世日本数学史における方程式論----宅間流の『遷式術』2022

    • 著者名/発表者名
      小川束
    • 雑誌名

      RIMS Kokyuroku Bessatsu

      巻: B89 ページ: 33-47

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 和算研究の国際化に向けて2021

    • 著者名/発表者名
      森本光生・小川束
    • 雑誌名

      数学史研究

      巻: 239 ページ: 105-113

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 日本数学史研究の可能性2021

    • 著者名/発表者名
      小川束
    • 雑誌名

      現代思想

      巻: 49-8 ページ: 22-34

  • [雑誌論文] 算額文化地理学の試み2021

    • 著者名/発表者名
      小川束
    • 雑誌名

      RIMS Kokyuroku Bessatsu

      巻: B85 ページ: 1-13

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 算額文化地理学のすすめ2021

    • 著者名/発表者名
      小川束
    • 学会等名
      日本数学協会
    • 招待講演
  • [学会発表] 近世日本数学史における方程式論2021

    • 著者名/発表者名
      小川束
    • 学会等名
      京都大学RIMS共同研究(公開型)
  • [学会発表] 岡之只(1791--?)の数学思想2021

    • 著者名/発表者名
      小川束
    • 学会等名
      日本数学会

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi