研究課題/領域番号 |
19K03610
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研究機関 | 茨城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
弘畑 和秀 茨城工業高等専門学校, 国際創造工学科, 教授 (30321392)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 離散数学 / グラフ理論 / 閉路 / 弦 / 弦付き閉路 / 点素な閉路 / 最小次数和 / 全閉路的グラフ |
研究実績の概要 |
グラフの閉路上にある非連続な2頂点を結ぶ辺を「弦」という。本研究課題の初年度にあたる令和元年度は、従来の閉路に関する研究を拡張し、弦をもつ閉路(弦付き閉路)に関する研究を行った。二つのグラフがどの頂点も共有しないとき、それらのグラフは「点素」であるという。本研究においては、点素な弦付き閉路に関する研究を最小次数和条件の観点から行った。ここで、kを1以上の整数とする。2008年、Finkelは、頂点数が4k以上で最小次数が3k以上のグラフには、k個の点素な弦付き閉路が存在することを証明した。2010 年、Chiba・Fujita・Gao・LiはFinkelの次数条件を「非隣接な2頂点の最小次数和(6k-1以上)」としても同様の結果が成り立つことを証明した。これはグラフのすべての頂点の次数を調べなくても、非隣接な2頂点だけに注目し、それらの次数和がすべて6k-1以上であればよいというものである。本研究においては以上の結果の拡張を行った。1960年、Oreは非隣接な2頂点の最小次数和条件のもとで、グラフのすべての頂点を通る閉路(ハミルトン閉路)に関する研究を行った。この次数条件は「Ore Condition」と呼ばれ、現在ではグラフ理論のいろいろな研究において使用される指標となっている。どの2頂点も非隣接な頂点の集合を「独立頂点集合」という。Ore Conditionは二つの頂点からなる独立頂点集合を考えた次数条件といえる。本研究においてはOre Conditionで考えた独立頂点集合の頂点数をさらに増やした次数条件を考えることで、従来の結果を拡張する定理を証明した。次数の小さな頂点からなる独立頂点集合を見つけ、弦付き閉路の再構築を行う手法で証明を行った。この証明法には応用性があり、今後、点素な弦付き閉路等の研究を行う際の有効なアプローチになると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の初年度にあたる令和元年度は、弦をもつ閉路(弦付き閉路)に関する研究を行った。ここで、kを1以上の整数とし、どの二つの頂点も隣接していない頂点の集合である「独立頂点集合」を考える。本研究においては、グラフがk個の点素な弦付き閉路をもつための独立頂点集合が満たすべき最小次数和条件について考えた。従来の研究では2頂点の独立頂点集合で考えていたが、本研究では頂点数をより増やした独立頂点集合を考えることで次数条件に改良を加え、点素な弦付き閉路の存在性について研究を行った。 当初の研究計画を大きく説明すると次の通りである。辺極大なグラフ、すなわち、グラフに1本でも辺を追加すると所望の結果が得られるグラフGを考える。このとき、Gにはk-1個の点素な弦付き閉路が存在し、これらから構成されるGの部分グラフで頂点数が最小のもの(Cとする)を選ぶ。ここで、Gからこの部分グラフCを除去したグラフをH(=G-C)とする。部分グラフCの最小性を保持したままで、いくつかの条件を満たすHを選ぶ。次に、このHがもつ性質を調べ、その事実をもとに、Gにはk個の点素な弦付き閉路が存在することを証明する。上述の研究計画に従って令和元年度は研究を行い、当初考えていた次数条件のもとで証明を行うことができた。証明では、部分グラフCの最小性やHの満たすべき条件に矛盾するグラフの存在を示すために、次数の総和が小さな独立頂点集合をHの中に見つけることがポイントとなることがわかった。以上の理由により、現在までの進捗状況を上記のように判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、指定要素を含む弦付き全閉路的グラフに関する研究を行う。ここで、グラフGの頂点数をnとする。「全閉路的グラフ」とは、3以上n以下の各整数値を長さとする閉路をもつグラフのことである。1952年、Diracはグラフがハミルトン閉路を持つための十分条件を与えた。すなわち「頂点数が3以上で最小次数がn/2以上であるグラフは、ハミルトン閉路を持つ」というものである。1960年、OreはDiracの次数条件を「非隣接な2頂点の最小次数和(Ore Condition)」に拡張した。これらの結果は1971年、Bondyによって「Ore Conditionを満たすグラフは、二つの部集合の頂点数がそれぞれn/2 (nは偶数)である完全2部グラフを除いて、全閉路的グラフである」という結果に拡張された。これはBondyの超予想である「グラフがハミルトン閉路を持つためのほとんどの十分条件は、いくつかの例外を除き、グラフが全閉路的グラフとなるための十分条件にもなる」を補完する結果である。全閉路的グラフで考えた各閉路が弦をもつグラフを「弦付き全閉路的グラフ」という。2017 年、Cream・Gould・Hirohataは、Bondyの結果をこの弦付き全閉路的グラフに拡張した。本研究においては、これらの結果の更なる拡張を目指し、指定要素を含む弦付き全閉路的グラフに関する研究を行う。どのようなグラフが指定要素を含む弦付き全閉路的グラフとなり、どのようなグラフがその例外となるのかに関する研究に取り組む。先行研究の次数条件を維持したまま指定要素を含む閉路を考えることにより、グラフの構造をさらに深く理解することができる。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会参加及び調査・研究のための出張を予定していたが、新型コロナウイルスの影響により、出張を取り止めたため、残金が生じた。この残金は令和2年度において、学会参加及び調査・研究のための旅費等に使用したいと考えている。
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