研究課題/領域番号 |
19K03610
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研究機関 | 茨城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
弘畑 和秀 茨城工業高等専門学校, 国際創造工学科, 教授 (30321392)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 離散数学 / グラフ理論 / 閉路 / 弦 / 弦付き閉路 / 点素な閉路 / 最小次数和 / 全閉路的グラフ |
研究実績の概要 |
令和3年度は、指定要素を含む点素な閉路に関する研究を行った。グラフ理論の中で重要な概念にグラフの閉路があり、古くからハミルトン閉路(すべての頂点を通る閉路) の存在や閉路の長さに関する研究が行われてきた。本研究では従来の閉路に関する研究を発展させ、指定要素を含む閉路に関する研究を行い、どのような次数条件のときにそれらの閉路が存在するのかについて研究を行った。これらの閉路の存在が証明されれば、それらをもとに指定要素を含む閉路によるグラフの分割問題に発展させることができ、グラフの構造をさらに深く理解することができる。これらの閉路によるグラフの分割問題は、グラフの因子問題(与えられたグラフに対して、ある特定の性質を満たす全域部分グラフの存在を示す問題)とも密接な関係があり、本研究で得られた結果を適用して因子問題研究を行うことができる。 ここで、グラフをGとして、Gの頂点数をnとする。また、グラフGの頂点数nが十分大きいとする。指定要素としてk個の頂点を指定した場合、Gの最小次数がn/2以上であれば、Gには指定したk個の頂点をそれぞれ含む点素な閉路によるグラフの頂点分割が存在することが知られている。また、指定要素としてk本の辺を指定した場合、Gの最小次数または最小次数和に関する条件のもとで、Gには指定したk本の辺をそれぞれ含む点素な閉路によるグラフの頂点分割が存在することが知られている。これらの研究をもとに、本研究においては、どのような次数条件のときに複数の指定要素を含む点素な閉路が存在するかについて、結果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は次数条件の観点から、指定された要素を含むk個の点素な閉路に関する研究を行った。グラフに点素な閉路が存在することを証明する方法として、辺極大なグラフを考えることが有効である。ここで、辺極大なグラフ(Gとする)とは、Gにおける任意の非隣接2頂点を辺で結ぶと所望の点素な閉路が存在するグラフのことである。従って、Gにはk-1個の点素な閉路C1, C2, … , Ck-1(これらをまとめてLとする)が存在することになり、頂点数の合計が最も小さくなるLを選ぶ。今、GからLを除いてできるグラフをHとする。ここでさらに、連結成分数が最小となるようなHを考えたり、k-1個の点素な閉路で弦(閉路上の非隣接2頂点を結んだ辺)をできるだけたくさん含むものを考える。その後はグラフLとHがどのように辺で繋がっているのかを調べるなどして、閉路の取り換えを行い、より頂点数の少ないグラフL′を構成し矛盾を導く。以上のような議論を行うことで、指定された要素を含む点素な閉路の存在を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、グラフにおける指定された要素を含む点素な閉路に関する研究を行う。最近では点素な閉路の存在に関して、いろいろな方向に発展させた問題が考えられている。どの2頂点も非隣接である頂点集合を独立頂点集合という。本研究においては、グラフが指定された要素を含む点素な閉路をもつための独立頂点集合が満たすべき次数条件について考える。これまでに、次数条件のもとで任意に指定した頂点や辺を含む点素な閉路の存在性に関する結果が証明されている。それらの結果の中には、指定された要素を含む点素な閉路の存在性を示しただけでなく、それらがすべての頂点を含んでいるグラフの分割にまで発展させているものもある。本研究では、指定された要素を含む点素な閉路によるグラフの分割が存在するための次数条件について研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会参加及び調査・研究のための出張を予定していたが、新型コロナウイルスの影響により、出張を取り止めたため、残金が生じた。この残金は学会参加、調査研究、物品等に使用したいと考えている。
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