Gを頂点数がnのグラフとする。本研究の最初は、閉路上にある非連続な2頂点を結ぶ辺である「弦」をもつ閉路(弦付き閉路)に関する研究を行った。どの2頂点も非隣接な頂点の集合を「独立頂点集合」という。本研究においては、グラフが点素な弦付き閉路をもつための独立頂点集合が満たすべき次数条件について研究を行った。これまでの研究では2頂点からなる独立頂点集合で考えていたところを、頂点数をより増やした独立頂点集合を考えることで次数条件に改良を加え、従来の結果を拡張する結果を得た。 1971年、Bondyは「非隣接な2頂点の最小次数和がn以上であるグラフは、ある特定の完全2部グラフを除き全閉路的グラフである」という結果を証明した。ここで「全閉路的グラフ」とは、3以上n以下のすべての長さの閉路をもつグラフのことである。Creamらは、Bondyの結果を弦付き全閉路的グラフに拡張し、完全2部グラフ以外にも例外となるグラフが存在することを証明した。本研究においては、これらの結果の更なる拡張を目指し、どのようなグラフが指定要素を含む弦付き全閉路的グラフとなり、どのようなグラフが例外となるのかに関する結果を得た。 最終年度には指定要素を含む点素な閉路に関する研究を行った。指定要素としてk個の頂点を指定した場合、Gの最小次数がn/2以上であれば、Gには指定したk個の頂点をそれぞれ含む点素な閉路によるグラフの頂点分割が存在することが知られている。この結果をもとに、本研究においては、どのようなときに複数の指定要素を含む点素な閉路が存在するのか、次数条件と関連する結果を得た。 以上の研究はグラフの因子問題(ある特定の性質を満たす全域部分グラフの存在を示す問題)とも密接な関係があり、また、先行研究の次数条件を維持したまま指定要素を含む閉路の存在を示すことにより、グラフの構造をさらに明らかにすることができる。
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