| 研究課題/領域番号 |
19K03611
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| 研究機関 | 明治大学 |
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研究代表者 |
秋山 正和 明治大学, 研究・知財戦略機構(中野), 特任准教授 (10583908)
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| 研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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| キーワード | 3Dシミュレーション / 細胞の多面体モデル |
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| 研究実績の概要 |
申請者は，「生物の形態形成のプロセスを表現した数理モデルを構築し，そのモデルの数学解析を通して，形態形成のからくりを理解する」ことを研究の最終目標としている．この目標を達成するために，本プロジェクトでは，細胞の動態を数理的に扱い，組織や器官全体の形を記述できるような方法論を確立することを最重要課題として取り組んできた．このような方法論は，先行する研究として，細胞を粒子・多面体・Phase Fieldなどで表現する方法があるが，本研究では，計算量が比較的小さいという理由で多面体法に関して重点的に研究を行ってきた．
多面体法(Vertex Dynamics Model)は，本田久夫氏(神戸大)らが開発した手法であり，細胞を2次元もしくは3次元の頂点と，それらをつなぐ辺もしくは面の集合で表現し，この頂点に関するエネルギー汎関数を与え，その勾配系として頂点の駆動方程式を導出・計算を行う方法論である．組織全体の形態形成を理解する上で，欠かせないツールとなりつつあり，近年，主要な研究ジャーナルで理論と実験を橋渡しする役目も担っていることから，非常に注目度の高い方法論である．
本研究では，このエネルギー汎関数の設計および最小化に関して，数学的な観点から取り組むことにより，今まで問題とされてきた課題をクリアすることを目標としている．
本年度ではエネルギー汎関数の体積保存項と，周長保存項に関して非常に形の整った公式を与えることができた．この公式を用いた数値計算も実装され，関連した研究論文が現在査読中である．
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バーテックスモデルのエネルギー汎関数は，細胞の面積/体積に対する保存項，周長に関する拘束項などが含まれる．エネルギー汎関数の引数は，時間発展する複数の頂点（すなわち関数）であるため，通常の微分ではなく，汎関数の枠組みで捉えることが肝要であるが，これまでの研究により，その汎関数微分に関しては厳密な公式を与えることができた．
具体的には，まずエネルギー汎関数のうち，体積保存項に関しての公式を与えた．体積保存項は，現実の体積値と理想の体積値が含まれるが，通常この２値に関しては，「差の型式」と「商の型式」が比較的多く用いられる．まず，差の型式に関しては，検討している頂点位置に摂動ベクトルを与えることで，エネルギー汎関数の挙動を調べることになるが，「ベクトルでの微分」となるため，計算式が煩雑になる．そこで，計算をできるだけ効率良くかつ綺麗な形にするために，いくつかの補助定理を用意した．補助定理は，ベクトル同士の内積や外積および微小量（ε）の情報が含まれたもので，線形代数の公式として既知のものも含まれるが，特にε^2を無視した形が含まれたものは，計算の中で多く登場するため，前もって公式群として一覧を構成しておくことで，上記の計算が簡単になることを確認した．商の型式でも，補助定理を利用することで，差の型式と同様に公式を導くことができた．また，周長保存も戦略としては体積保存と同様な方法で導くことができた．
公式を整理することで，体積保存項と周長保存項は特殊なケースでは，幾何学的にも納得できる形となっていた．具体的には，周長保存は通常は目標値を0と設定するケースが多いが，細胞の形を凸な６角形とした場合，周長保存項と体積保存項からくる汎関数の方向ベクトルが厳密に正反対になることが確認された．つまりのこれらの項が状況によっては，互いに拮抗する力を生む項になり得ることを示唆している．
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| 今後の研究の推進方策 |
○Covid-19の影響もあり，共同研究の打ち合わせに少なからず問題はあるが，全般的には概ね順調に進んでいる．
○本研究で計算された，いくつかの公式および補助定理はC/C++言語で実装され，だれでもすぐプログラミングできるようにヘッダーファイルとしてまとめている最中である．これらは申請者のHPからDLできるようにする計画であり，すでに一部のヘッダーファイルは公開しているが，わかりやすいマニュアルの作成も行う予定である．
○連携研究者の佐藤純氏，林貴史氏（金沢大学）とともに，本計算結果に基づいたバーテックスモデルの数値計算を行っている．この系では遺伝子改変により，ショウジョウバエ複眼の個眼の形状を，（ほぼ）正六角形からひし形状にまで変化させることができるが，どのようなメカニズムによりこのような形態形成が起きているかが不明である．そこで，バーテックスモデルと申請者の開発した埋め込み型ルンゲクッタ法ソルバーをミックスさせ，非常に広いパラメタ空間を高速に探索する研究を進行中である．
○昨今のバーテックスモデルでは，体積保存項や周長保存項だけでなく，曲げエネルギーなども盛り込まれるケースが多くなってきているため，これに関しても公式を構成する予定である．予備的な計算では，曲げの角度を理想角度に保持する形での汎関数微分は厳密に導出することができ，学会にて報告を行った．一方，角度ではなく曲率で曲げを表現するケースもあるため，この公式に関しても構築する計画である．この公式の作成では，曲率の定義をより直感的かつ別の味方で表現したJean Ellen Taylor氏の結果を使用することで達成できると考えている．
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| 次年度使用額が生じた理由 |
予定していた旅費が安くなり，余剰金が発生したが，本年度に旅費として使用する計画である.
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