研究実績の概要 |
一昨年度・昨年度に引き続き, AAG暗号方式の安全性を高めるための考察を行った. 研究当初の想定をはるかに超える時間を本考察に取られているため, 今年度はこれに集中して研究を実施した. 今年度は昨年度に構成した(i)位数が素数pとpとは異なる素数qの2乗の積であるような, 半直積群と呼ばれる非アーベル群を方式を構成するためのプラットフォーム群とし, かつ(ii)AAG暗号方式の本質的な仕組みを維持しつつもプロトコルの一部を単純化した方式(改良AAG暗号方式)について, これまでの研究過程で出てきた課題(安全性を高めるために必要な条件の簡素化・元のAAG暗号方式の問題点の解消・鍵生成等に利用する群の元の選定方法)や方式の安全性そのものに関する考察を行った. この改良AAG暗号方式の解析は煩雑になると予想されたため, 方式を構成した直後(昨年度)から比較的容易なパラメータ設定での解析を実施してきた. この設定での解析は昨年度だけ では完了しなかったため, 今年度も引き続きその解析を実施した. その結果, 改良AAG暗号方式が既存の課題を解決し, かつ望ましい安全性を有していることを確認することができた. 続いて, 一般的な パラメータ設定での解析を実施した結果, この場合についても同様の考察を得ることができた. そこで, 本結果を論文としてまとめるために, 改良AAG暗号方式についての解析結果, すなわち方式の安全性証明の細部の詰めを開始した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
暗号方式の構成に利用するプラットフォーム群を当初の想定よりも構造が複雑な群に変更したため, その群上の演算や共役など, 方式の安全性解析に必要な情報を改めて調査する必要があった. また, 安全性の解析自体にも時間を要することは想定していたものの, 予想以上に煩雑で時間を要した. 以上の理由により遅れているとした.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は今年度をもって終了する予定であったが, AAG暗号方式の改良に想定をはるかに超える時間を取られてしまった. また, その成果をまとめるためにもう少し時間が必要である. そのため, 研究期間を1年延長することにした. 次年度は, 今年度に実施した改良AAG暗号方式の安全性解析の結果を論文にまとめる. また, 時間の許す限り, 当初の目標であった非アーベル群および非可換環上の両側加群をプラットフォーム群とする公開鍵暗号方式の一般的構成方法を与えるための準備を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費の執行が計画通りに進まなかった. これは, 新型コロナウイルス感染拡大の影響により, シンポジウムなどへの参加方法を現地参加からオンライン参加に切り替えたことによるものである. 未執行分については, 現在執筆している論文の投稿料, 設備備品費や旅費に充てる予定である.
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