研究実績の概要 |
本研究者らが構成したAAG暗号方式を,望ましい安全性を有する方式に改良するための考察を実施した.当初は1年から2年程度で実施する予定だったが,初期の考察の際に顕在化した「安全性を高めるための要件」「AAG暗号方式自体が抱えている問題点」および「鍵生成等に利用する群の元の選定方法」という三つの課題の解決に想定を超える時間を要することになった.そのため,今後の研究を円滑に進めるためにも, AAG暗号方式の改良に絞って研究を進めてきた. 最初は暗号方式を構成するためのプラットフォームとして,異なる二つの素数pとqの積p×qを位数とする半直積群と呼ばれる非アーベル群を考えたが,考察を進める中で前述の三つの課題の一部を解決できないことが判明した.そこで,プラットフォームをpとqの2乗の積p×q×qを位数とする半直積群に変更した.また,方式自体も元のAAG暗号方式の本質的な仕組みを維持しつつ,一部分を単純化した.これにより,望ましい安全性を有する暗号方式(改良AAG暗号方式)を構成することができた.本成果については,2022年度に論文誌に掲載された. AAG暗号方式は,数学的に証明可能な安全性を有する暗号方式を任意の非アーベル群上で構成するための一つの一般的手法を与えているが,やや弱い形の安全性しか有していなかった.本研究で構成した改良AAG暗号方式は,非アーベル群の中でも半直積群という限定された枠組みではあるが,最も強いと考えられる安全性を有する方式を構成するための一つの一般的手法を与えたということを意味する.
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