研究課題/領域番号 |
19K03613
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
方 青 山形大学, 理学部, 教授 (10243544)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高精度差分スキーム / 周期沈殿現象 / 非線形反応拡散方程式 / 数理モデル / 予測モデル |
研究実績の概要 |
無機化学と分析化学の分野において、沈殿溶解平衡は固体とその飽和溶液が共存する系であり、重要な平衡理論の一つである。その自然現象では、空間1次元において帯状が、空間2次元においてリング状が生成するような周期沈殿現象が存在する。このような現象の数理モデルとして反応拡散方程式と呼ばれる非線形放物型偏微分方程式が提案されている。偏微分方程式の解析解を求めることの難しさが周期沈殿現象を完全に解明できない原因にもなっている。したがって、パターンを生成する反応拡散方程式を調べることは非常に重要な理論価値と応用価値をもち、より正確に求められる数値解法とより詳しくわかる真の解の力学的な性質に関する研究が問われている。
自己組織化された時空間パターンのほとんどが拡散と反応の間の複雑な相互作用からなる反応拡散システムで形成されるため、関連するメカニズムを明確に理解するための重要な知識を提供する必要がある。本年度は、数理モデルとしての反応拡散方程式に対して高精度数値解法を開発して、周期沈殿現象をより正確に解明するツールを提供するように従事した。周期沈殿を生成する現象を表す数理モデルである反応拡散方程式系の力学的な挙動を調べるために、対応する固有値問題の性質を調べ、有限次元の慣性多様体を構成した。もともと無限次元の偏微分方程式系を有限次元の常微分方程式系で近似できることを示した。数理モデルのさらなる有効性を確立するには、対応する常微分方程式系の平衡解の安定性を調べた。リーゼガングパターンの空間的周期性に対して、侵入種やプレドープ種の濃度などの実験条件の影響が報告されていた。実験的および数学的観点を組み合わせた研究で核形成後モデルの有効性を実証する実験結果と相分離にに基づく数値反応拡散シミュレーションの成功に貢献した。研究成果は国際学術誌に論文として掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高精度の差分スキームを構成し発展させたことにより、リーゼガングパターンのような周期沈殿現象を記述する非線形反応拡散方程式系からなる数理モデルの有効性を確立することに貢献した。研究成果は国際学術誌に論文として掲載された。ただし、コロナ禍のため予定の研究集会が中止となり、発表機会に影響があった。今後オンライン研究集会に参加する努力が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
リーゼガングパターン周期沈殿を生成する現象をもっと調べるために、空間2次元を拡張して空間3次元における反応拡散方程式系の数理モデルを考える必要がある。そのような数理モデルの有効性を確立するための高精度差分スキームを構成する。また、3次元空間領域における反応拡散方程式系の力学的な挙動を調べる。そのために、有限次元の慣性多様体を構成するアプローチを考え、その上での平衡解の安定性を調べ、平衡解から周期パターンへの分岐構造を解明することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はコロナ禍のため予定の研究集会が中止となり、発表機会に影響があった。次年度の研究集会の参加と学術誌の掲載費に使う予定である。
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