研究課題/領域番号 |
19K03618
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
池田 榮雄 富山大学, 理学部, 客員教授 (60115128)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 中心多様体縮約 / Bogdanov-Takens型分岐 / フロントダイナミクス / 3成分反応拡散系 / 特異摂動法 / 3次のJordanブロック型退化 / 進行フロント解 |
研究実績の概要 |
本研究開始時点で,オランダのM. Chirilus-Brukner,オーストラリアのP. Heijister,ドイツのJ.D.M. Rademacherらとの共同研究が既に始まっており,3成分反応拡散系の定常フロント解での線形化方程式が3次のJordan標準形に退化する場合に対して,Bogdanov-Takens型の分岐理論を適用し,中心多様体上の常微分方程式系に縮約出来ることを数学的に示した。初年度は退化次元の少ない対称性のある余次元2のBogdanov-Takens型分岐点近傍での縮約方程式の導出とその重要な係数を決定した。特に,係数決定においては退化特異点での線形化作用素の固有関数及び,その共役作用素の固有関数の情報を必要とし,さらにそれらと非線形項との積の積分値を計算する必要があるが,ここでは従来のような膨大な計算をする必要はなく,進行フロント解の持っている性質(解の存在性や安定性)を利用して,比較的単純な計算から係数を決定することが出来た。ここが本研究課題の意味する「深化」である。 さらに,決定された係数を持つ常微分方程式系ダイナミクスと元の偏微分方程式系ダイナミクスの数値計算結果を比較し,その理論が正しいことを検証した。パルス解の場合は2つの部品であるフロントとバックの相互作用からHopf分岐が出現し,フロント解単独からは振動モードの解は分岐しないと考えていたが,全く新しい発見であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予想した通り,初年度の計画である退化次元の少ない対称性のある余次元2のBogdanov-Takens型分岐点近傍での縮約方程式の導出を行い,その重要な係数を決定することが出来た。また,その結果はPDEの数値計算結果とぴったりと一致した。上記の係数を決定する上で,従来のような膨大な計算をする必要はなく,進行フロント解の持っている性質(解の存在性や安定性)を利用して,比較的単純な計算から係数を決定することが出来た。この結果は既に,Journal of Nonlinear Science Vol.29(2019),2911-2953に掲載されている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,より退化度の高い(分岐のButterfly構造を内在した)Bogdanov-Takens型分岐点近傍での縮約方程式の導出及び,係数決定を行う予定である。その為には,更なるフロント解の持っている性質が必要になる。すなわち,進行フロント解の加速度の情報を導き出すための特異摂動法による解の展開が必要になる。時間変数も考慮した接合漸近展開の手法を構築したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定より少し計算速度の速い数値計算用のワークステーションを購入した為に,物品費が20万円程多くなった。オーストラリアへの研究打ち合わせの為の出張を考えていたが,少し節約するために,Zoom等の双方向のweb会議を用いて研究打合せを行った。来年度は出張によるより綿密な研究打合せを考えているので,その分の旅費として30万円弱を繰り越した。
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