研究課題/領域番号 |
19K03619
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大木 健太郎 京都大学, 情報学研究科, 助教 (40639233)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 低次元化フィルタ / オンライン学習 / ロバスト適応制御 |
研究実績の概要 |
本年度は国際学会発表を通して,平均場型量子フィルタと低次元Kalmanフィルタの発表を行った.平均場型量子フィルタは莫大な数の量子スピン系を,低次元 Kalman フィルタは高次元線形量子系の低次元化手法である.これらはロバスト量子フィードバック制御の実時間における実装を見据えた結果であり,大規模なシステムにおける実時間制御のためには何らかの低次元化が必要になるため,あらかじめ近似精度について調べることにした.これらは設計者が設計環境に応じて定められるものであり,制御対象のもつ不確かさとは分けて考えることができる.平均場型量子フィルタは平均場ゲームの考えを量子系に初めて応用したものであり,本研究の目的である量子系のロバスト制御とは独立に,低次元化の手法としても有用であると思われる. また本年後半では,量子系の安定化制御問題に対し,ロバスト制御とオンライン学習手法を合わせた適応制御手法を提案し,国内学会および国際学会に投稿した.ロバスト制御の手法では,有界な不確かさの集合を考えなければならないが,提案手法では不確かさの有界性は不要であり,数値実験上ではパラメータの不確かさが任意に大きくても所望の平衡点に収束させられることが確認されている.この手法は,確率最適化などで知られる Robbins-Monro アルゴリズムを量子系の安定化制御問題に拡張したものであり,投稿した論文では統計的な性質や局所収束性などが調べられている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定したロバスト性解析を精緻にやらなくとも制御できる手法を発見できたため,順調に進んでいる.ただし,これは全く対象の量子系のもつ不確かさを考えなくてもよいわけではなく,小さな不確かさに対するロバスト制御ができることが前提になっており,この不確かさの特徴づけはまた別に行う必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
提案した適応制御則は,局所収束性は言えるが,学習アルゴリズムのもつ性質により局所安定性は言えない.局所安定性を保証する別の適応制御則が提案できるか検討する.また,大域的収束性は数値実験で確認しているだけなので,これがなぜ成り立つかを解析する. 適応制御はパラメータの不確かさに対して有効であるが,予期せぬ相互作用などダイナミクスそのものが変化する場合には対応しきれない.Wasserstein 距離の量子版などが2020年度後半に現れたので,これら新しい尺度も利用して不確かさの特徴づけを行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症のため,国内外の学会の出張費および研究打ち合わせができなくなったため,大きく余った.研究に高性能な計算機が必要になったため,学会参加費と合わせて使用する.
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