研究課題/領域番号 |
19K03623
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
皆本 晃弥 佐賀大学, 理工学部, 教授 (00294900)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ウェーブレット解析 / 画像処理 |
研究実績の概要 |
我々は,これまで早期がん検出法を開発するとともに,開発手法の数学的な理論も構築してきた.一方,近年,深層学習(ディープ・ラーニング)が着目され,特に画像認識の性能の高さでは広く認知されているが,その数学的な理解には至っておらず,人間には深層学習で得られた特徴量の意味を解釈できない.高精度に内視鏡画像から早期がんを検出し,その理由も明らかにするには,画像から人間が解釈可能な「良質な特徴量」を抽出しなければならない.そこで,本研究では,ウェーブレット解析と位相的データ解析のマルチスケール性に着目して,画像から数学的に解釈可能な「良質な特徴量」を抽出する方法を開発することを目的としている. 初年度は,ウェーブレット解析に基づいた画像特徴抽出法を中心に開発し,それを内視鏡画像からの癌検出や歩容抽出などへ応用し,以下のような成果が得られた. (1)リフティング・ウェーブレットを用いた内視鏡画像からのDysplasia検出,(2)ハール・ウェーブレットに基づく早期食道がんの検出,(3)カーブレットに基づく早期胃がんの検出,(4)ダイアディック・ウェーブレットおよびSSIMに基づく歩容の検出.特に,(4)では,画質評価方法であるSSIMを画像特徴抽出にも利用できることを示した.なお,これらの成果は,査読付き国際会議International Conference on Wavelet Analysis and Pattern Recognition 2019および International Conference on Information Technology: New Generations 2019において発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,申請者らが今までに開発したウェーブレット解析に基づいた画像特徴抽出法を基礎として,ウェーブレット解析と位相的データ解析のマルチスケール性に着目し,画像から数学的に解釈可能な「良質な特徴量」抽出法を開発することを目的としていた. 位相的データ解析に基づく特徴量抽出については,大学院生を含む研究協力者らの協力を得ながらデータを蓄積しているところである.また,ウェーブレット解析に基づいた画像特徴抽出法については,(1)リフティング・ウェーブレットを用いた内視鏡画像からのDysplasia検出,(2)ハール・ウェーブレットに基づく早期食道がんの検出,(3)カーブレットに基づく早期胃がんの検出,(4)ダイアディック・ウェーブレットに基づく歩容の検出,という成果が得られた.以上のことから,初年度としては,おおむね順調であると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
これまでと同様に,研究協力者と緊密に連携し,次の課題に対して検討を進める予定である.なお,これらの研究は,人工知能技術のホワイトボックス化にもつながると期待される. (1)ウェーブレット解析に基づく特徴量とその深層学習(特に自己符号化器)との関連を調べ,深層学習における「良いデータ」の指標もしくは目安を作成する. (2)ウェーブレット解析と位相的データ解析に基づいた画像特徴量抽出方法を開発し,その性能を調べる. (3)(1)および(2)で開発された方法に基づいた画像処理方法やデータ分析法を開発する.
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次年度使用額が生じた理由 |
授業の関係や想定していなかった業務の増加、新型コロナウイルス感染予防対策等により、参加を予定していた国際会議、学会、研究集会などへの参加ができなかったため、予定よりも未使用金額が多くなった。次年度も学会や国際会議などは延期・中止される可能性が高いため、研究成果の発表を学術英文論文誌を中心として行う予定である。そのために、論文掲載料や英文校正代などが増加する可能性がある。
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