HJ法に内部ペナルティー法を適用した方法(IP法と呼ぶ)に関して,今年度は下記のような結果を得た: IP法とHJ法それぞれで得られる近似解の間の差異に対するペナルティ・パラメータaとメッシュサイズ・パラメータhによる事前評価式を導出した.この事前差異評価とFalkらによって得られているHJ法の事前誤差評価を用いて,IP法に対するパラメータaとhによる事前誤差評価を導出した.これにより,パラメータaをa=O(1/h)にとれば,IP法の事前誤差評価はHJ法の事前誤差評価と同様になることが分かった.この結果は,昨年度,近似に用いる関数の次数が最も小さい場合のみに証明されていたが,今年度,その次数の制限を取り除くことができた.パラメータaの選び方a=O(1/h)は,これまでにHuangらによって得られている選び方a=O(1/h^2)より良い選び方となる.実際,a=O(1/h)と選べばa=O(1/h^2)と選ぶより,aを小さく選ぶことができ,特にhが非常に小さくなった時には,丸め誤差による悪影響をより受けにくくなる. 次に,IP法で生ずる連立一次方程式を解く方法として,双対問題(変位に関する連立一次方程式)に共役勾配法を適用し,その内部反復に現れる正定値対称行列を係数行列とする連立一次方程式にはICCG法を適用する方法について考察をした: ICCG法で解くことにより,その反復回数がパラメータaに依らなくなることが,数値実験を通して分かった.また,双対問題の係数行列となる正定値対称行列の条件数Condに対して,Cond>=Ch^-4という解析的評価を得た.ここで,Cはaとhに依らない正定数である.この評価はCondがaに依らないことを示唆しているが,数値的にCondがaに依らないという結果を得た.以上のことから,本方法の反復回数がパラメータaに依存しないことが分かった.
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