令和4年度は,交互射影法が生成する点列の挙動を詳細に調べた.多項式で定義される超曲面と2つの多項式で定義される曲面と直線の交叉について,厳密な収束レートの評価を完成させ論文として出版した.この結果を日本オペレーションズ学会の RAMP シンポジウムと,統計数理研究所の研究集会「最適化: モデリングとアルゴリズム」で発表した.さらに,超曲面と超平面の交互射影法について詳細な解析をし,特殊な曲線が交互射影列を非常に早いスピードで吸収することを発見した.この結果により,以下の半正定値錐に関する研究において交互射影列の挙動予測が出来るようになった. また,令和3年度に行った研究を発展させ,半正定値錐とアフィン平面の交叉について厳密収束レートを考察した.まず交互射影法の点列を表現する解析的な公式を得た.その公式と固有多項式に付随するニュートン図形を用い,半正定値推と直線との交叉について,厳密収束レートを決定した.この結果により,既存の概念と交互射影法の収束レートとのギャップを明らかにし,既存研究では得られなかった様々な収束レートを持つ例を生成することに成功した. 次に,3x3 の半正定値行列の錐と 1 点で交わる 3 次元平面に対して,交互射影法の挙動を決定する特殊な曲線を発見し,その曲線上に初期値をとった場合の厳密な収束レートを求めた.この厳密収束レートにより,既存の上界が tight であることを示した.これは本研究で初めて明らかになったことである.また,その特殊な曲線が交互射影列を吸収することを発見し証明を与えた.この吸収性の発見においては,多倍長の高精度計算が重要な役割を果たしている.さらに 半正定値錐と一つの rank 1 行列において交わるすべての 3 次元平面をグラスマン多様体と見なし,次元を求めパラメータ化を行った.これにより交互射影法のさらに詳細な解析が可能になった.
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