研究課題
1) 連続時間マルコフ連鎖で駆動される後退確率微分方程式に関して以下の考察・解析を実施した:(i) マルコフ型後退確率微分方程式と関連した非線形常微分方程式が、マルコフ連鎖の生成行列の形状に依存して、数値解析が難しいいわゆる硬い(stiff)方程式が現れ得ることを確認した。その場合に有効な数値解法として、後退確率微分方程式に関する線形多段法を適用するのが有効ではないかととの知見を得た。(ii) 連続時間マルコフ連鎖や点過程を用いてネットワーク上でモデル化されるサイバー保険のプライシングやリスク計量化に後退確率微分方程式が活用できるとの知見を得て、さらに、サイバー保険のプライシングモデルの研究を行っている研究者(Stefan Weber教授, Hannover大学)との意見交換を行った。(iii) モデルの不確実性を考慮した連続時間非線形マルコフ連鎖と後退確率微分方程式の関連性について考察した。また、学生(土橋健吾氏)の修士論文研究指導を通して、モデルの不確実性を考慮した確率微分方程式モデルの非線形マルコフ連鎖近似法の実装について知見を得た。2) 前年度行った弱時間整合性を持つ動的リスク尺度の反射型後退確率差分方程式を用いた解析について、以下の発展的考察を実施した:(i)動的リスク尺度に限らず、より一般的に非線形な最適停止問題としての定式化と反射型後退確率差分方程式を用いた解析手法の考察。(ii)状態変数の次元がある程度大きい時にも適用可能な数値解法の提案:・最小2乗モンテカルロ法、・ディープラーニングによる非線形回帰と線形多段法の組み合わせ手法、・求積法とスパースグリッドの組み合わせ手法、(iii)パラメトリックな弱時間整合的動的リスク尺度の例の考察。
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Mathematics for Industry (Cheng, J., Dinghua, X., Saeki, O., Shirai, T. (eds) Proceedings of the Forum "Math-for-Industry" 2018)
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