研究実績の概要 |
本研究課題では, 前年度までに, 時間方向に分数段近似を用いた粒子法の数値計算で行われている圧力Poisson方程式に摂動項を付加した微圧縮Navier--Stokes方程式を導入し, 創成解問題への適用を通して, 導入した流れ問題に対する特性曲線一般化粒子法の基本的な安定性や適切性を確認していた. そこで本年度は, 前年度に引き続き, 期待される誤差評価に関連した数値実験を行うとともに, より物理的に自然で実問題に近いと考えられるいくつかの検証問題に対して, 提案した微圧縮Navier--Stokes方程式に対する特性曲線一般化粒子法を適用し, その安定性や適切性に関する数値実験を行った. これにより, 本研究課題の目的とした3項目のうち, 第2,3番目の項目について, おおよそ期待されていた成果を得ることが出来た. さらにこの成果を, 粒子法の主たる研究者組織の1つとして国際的にも認知されているSHERICが主催する国際会議へ投稿し, 査読を受けた後に講演を受理された. 残念ながら感染症拡大により当該国際会議が中止, 翌年度に延期となったため, 得られた成果を粒子法の数値計算に関係する研究者の間に周知する機会は持ち越しとなってしまった. しかし, 翌年度の当該国際会議への投稿が査読を受けた後に受理されたため, いくつかの数値実験を加えた安定性に関する成果を, 粒子法の数値計算に関係する研究者の間に周知する機会を得ることが出来た. 最後に, 研究計画で本研究課題の目的の1つとした "非圧縮Navier--Stokes方程式に対する特性曲線一般化粒子法の導入と誤差評価" について, 研究代表者が従来得ている知見では不足する点について引き続き補助的な数値解析に関連する成果を得た. これにより, 最終年度に向けて, 最終的な特性曲線一般化粒子法の誤差評価を得ることが期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
"5. 研究実績の概要" 欄でも述べた通り, 導入した微圧縮Navier--Stokes方程式に対する特性曲線一般化粒子法に関する数値実験を行うことで, 創成解を用いた誤差評価に関する数値実験, およびより物理的に自然な検証問題を用いた安定性や適切性に関する数値実験において, 一定の成果を得ることが出来た. これにより, 本研究課題が計画段階で目的とした3項目のうち, 数値実験に深く関係する2項目について, おおよそ当初に想定していた成果を得ることが出来た. また残る1つの目的である微圧縮Navier--Stokes方程式に対する特性曲線一般化粒子法の誤差評価に関しても, 最終的な評価に不足するいくつかの補助的な知見を既に得ている. これにより, 本研究課題の最終年度に向けて, 最終的な評価を得ることが期待できる. さらに得られている成果を, 粒子法の主たる研究者組織の1つとして国際的にも認知されているSHERICが主催する国際会議へ投稿し, 査読を受けた後に講演を受理された. したがって, 得られた成果が一定の国際的な水準に達していることが第三者による評価によって示された. 以上のことから, 本研究課題はおおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は, "非圧縮Navier--Stokes方程式に対する特性曲線一般化粒子法の導入と誤差評価", "数学的基盤が整備された特性曲線一般化粒子法の計算機実装と誤差評価の再現実験", および "非圧縮Navier--Stokes方程式に対する特性曲線一般化粒子法の実問題への応用" の3項目を明らかにすることを, 計画段階において目的とした. "7. 現在までの進捗状況" 欄でも触れた通り, 目的とした3項目のうち "数学的基盤が整備された特性曲線一般化粒子法の計算機実装と誤差評価の再現実験" および "非圧縮Navier--Stokes方程式に対する特性曲線一般化粒子法の実問題への応用" について, 数学的基盤の整備を後回しとしたものの, 微圧縮Navier--Stokes方程式に対して提案した特性曲線一般化粒子法の安定性や適切性について一定の成果を上げた. さらに "非圧縮Navier--Stokes方程式に対する特性曲線一般化粒子法の導入と誤差評価" につていも, 最終的な成果を得るために不足しているいくつかの補助的な知見を既に得ている. そこで, この段階までに得られている様々な数値解析に関する知見を利用して, 非圧縮Navier--Stokes方程式に対する特性曲線一般化粒子法の数値解析を進める. またこれらの成果を基に, 粒子法に対する誤差評価を重要課題として取り上げ関心を持ち当該分野において世界的に広く認知された国際会議にて成果発表を行い, 研究代表者が得た成果の国際的な周知を図ると共に, 今後の研究計画策定に必要な情報収集などを行う. 感染症の拡大により当該国際会議が昨年度は中止となったため, 今後より多くの機会を得る努力をして成果発表に務める予定である.
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