研究課題/領域番号 |
19K03643
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
江上 親宏 東京農業大学, 地域環境科学部, 教授 (90413781)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 結合振動子系 / リズム現象 / 同期現象 / Hopf分岐 / 写像度 / 同期モード / 時間遅れ |
研究実績の概要 |
本研究では、リミットサイクル振動子による結合振動子系の同期モードの共存と引き込み現象の解析に向けて、数学理論と実験の両面からのアプローチを推進する。数学解析では、主に次の2点で解の分岐・安定性解析の新手法の開発を目指す。①安定なリミットサイクルの共存問題においては、S1-degreeと位相縮約法を組み合わせてリミットサイクルの振動数を区別する方法を考案する。②周期的な外部摂動による強制引き込み現象に対しては、Coincidence degreeと位相縮約法を組み合わせて解の安定性判別の手法を提示する。 一方、数学的視点から定理に沿って結合力や時間遅れの大きさを調節できるような工夫を施した実験系を再設計・構築し、モデルの解析結果を実証する観測データを取得する。 初年度は、次に示す成果が得られた:結合振動子系における結合項の時間遅れが同期モードの共存を引き起こす本質的要因であるという事実に対して、数値シミュレーションによるアプローチと、これまでより精密な実証データの取得を進めた。 ポンプとチューブを用いて2つのBZ振動子を接続した反応系(2槽時間遅れ結合系)では、適当な結合強度のもとでチューブ長を変えるとリミットサイクルが分岐を起こし、同相と逆相の2つの同期モードが共存する。化学実験で取得したORPの時間振動データが示す現象を分類し、一方では数学モデル上のパラメータの適切な値を同定して数値シミュレーションを行って、両者の結果を照合することでモデルの妥当性について評価・検討を行った。その結果、これまで「同相」と判定していた同期モードは、完全な同相ではなく「ほぼ同相」の現象を捉えていたことが判明した。すなわち、真の同相同期に関しては、回転対称性を持つvan der Pol型振動子系の場合と同様に、本研究で構築している実験系による化学実験では観測が困難であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2槽時間遅れ結合系の研究課題において、実験データとの整合を図る数値解析についてはほぼ計画通りに進んでいるが、モデルの数学解析面でやや遅れている。新型コロナウイルス感染拡大により、研究活動以外の業務に多くの時間を要した。また、成果発表の場として年度内に参加を予定していた研究集会も中止となり、次年度へ持ち越すことになった。
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今後の研究の推進方策 |
BZ反応の2槽時間遅れ結合系では、上に示す通りの同期モードに関する新たな知見が得られたため、この情報を定理に取り込めるような形で数学解析を進める。 これと並列して、BZ反応の光感受性を利用したリズム制御の実験と数学解析については、当初の計画通りに進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、年度内に予定していた学会参加や研究打合せ等の出張を中止せざるを得なくなった。これらについては、次年度あらためて実施する計画である。
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