熱力学や統計力学は物性研究の根幹をなし、特に変分原理は平衡での構造予測を可能にする有用性の高い理論である。これらを非平衡状態に拡張する研究は100年以上にわたる歴史がある。大域熱力学は熱伝導系の全体量だけを用いる簡便な記述法だが、非自明な現象予測をもたらすことができ、数値実験による実証例も報告された(PRL, 2023)。大域熱力学が予言する「熱流による準安定状態の制御」はこれまで検討されなかった制御技術と物性開発の新しい可能性を示唆する。また、混合自由エネルギーを数値実験で決定するための新公式は、微小サイズ溶液の潜在能力を数値実験で定量化する新しい方法論を与える。
|