研究課題/領域番号 |
19K03648
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
長谷川 雄央 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 准教授 (10528425)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 複雑ネットワーク / パーコレーション / 感染症モデル / 相転移 / 臨界現象 |
研究実績の概要 |
exponential random graph(ERG)モデルによって、ランダムグラフに正の次数相関構造を入れたとき、ネットワーク上のパーコレーションはロバスト臨界性を示すことが先行研究で報告されていた。一方、別の研究では、別のアルゴリズム(local optimal algorithm; LOA)を使って正相関ネットワークを作った場合、ERGで作ったものとは異なり、かつランダムグラフのユニバーサリティクラスとも異なる臨界特性が報告されていた。大規模なモンテカルロシミュレーションのデータから有限サイズ効果を丁寧に検討した結果、LOAで作られたネットワークは正相関構造の度合いによらず、ランダムグラフと同じ平均場のユニバーサリティクラスであることを明らかにした。ERGで作られたネットワークは今回の規模を大きくしたモンテカルロシミュレーションでもロバスト臨界性を示すことも確認した。(北陸先端科学技術大学院大学・水高将吾氏との共同研究) その他、ネットワークと相転移に関する研究として以下の結果を得た:(a) ネットワーク上の多状態パーコレーション過程を提案した。一般的なランダムネットワーク上の多状態パーコレーション過程が形成する巨大連結成分を母関数で定式化することに成功した。(北陸先端科学技術大学院大学・水高将吾氏との共同研究)。(b) ネットワークを攻撃に対して頑健にする補強方法について検討した。最小次数をとる頂点同士をつなぐことが効率的にネットワークを頑健にすることを示した。(研究室学生との共同研究)。(c) ネットワーク上の感染症モデルの相転移の解析を通じて、マスクの飛沫抑制効果と人の繋がり方の特性の組み合わせが感染症の拡大に及ぼす影響を論じた。(研究室学生との共同研究)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究室学生とともに、ロバスト臨界性を示すネットワークにおけるフラクタル性を評価するため、(2,2)-flowerやbinary tree上の確率pのパーコレーションで形成される最大連結成分のフラクタル次元をボックスカウンティング法及びクラスター成長法により調べた。しかし、有限サイズ効果が予想よりも強く、一定の結論を下すに至ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
ロバスト臨界性を示すネットワークのフラクタル性について、より大規模な数値実験を行い、スケーリングの議論よりフラクタル性を評価する方向を探る。2021年度の研究を通じてERGとLOAの二つの方法で作られた正相関ネットワークについて、前者は臨界相を示し、後者はそうではないことを確認した。二つの方法がもたらすネットワーク構造の違いがロバスト臨界性の有無と関係している。ERGとLOAのネットワーク構造をより細かく調査していく。また、2021年度に得られた研究成果について順次学会発表や論文発表を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、予定していた出張を中止せざるをえなかったり、参加予定だった学会がオンライン形式に切り替わったことが、次年度使用額が生じた主な理由である。2022年度においては、追加計算のための計算機の購入、研究会・学会等の発表旅費、論文出版費用に使用していく。
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