研究課題/領域番号 |
19K03652
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
湯川 諭 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (20292899)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 破壊パターン / パーコレーション / 球殻の破壊 |
研究実績の概要 |
今年度は、破壊現象の普遍性を探るべく、まずは2次元系において曲率効果を調べる方針で研究を行った。対応する系としてマスクメロンの表面パターンや、氷天体の表面パターンなどがあげられる。曲率をもつ2次元面での破壊の普遍性を明らかにすることで、これらの系に対してここでの成果を応用できる可能性がある。 先行研究として球殻の衝撃破壊の研究があり、そこでは球殻内部の圧力を爆発的に増加させることで、破壊を発生させ、破壊によって生じた破片のサイズの分布を実験的、および計算機シミュレーションによってパーコレーションの観点から調べている。その先行研究のシミュレーションモデルを参考に、球殻の準静的破壊モデルを計算機上に構築した。具体的には、球殻をバネと質点で離散化しバネに破壊スレショールド、すなわちその長さまで伸びたらバネが破壊される閾値を設定することで破断が発生するようにした。球殻の内圧を外部パラメーターとし、準静的に圧力を増加させることで準静的な破壊を発生させる。質点は球殻を離散近似したときのボロノイ分割による素片の質量を持つようにしてあり、質量分布から破壊による破片のサイズ分布を計算することができる。このモデルを計算機上で大規模シミュレーションした結果、破片のサイズ分布を精度よく求める事ができ、暫定的であるがスケーリング則を得た。 このスケーリングはパーコレーションの性質が強く反映されているようである。本研究の主目的の一つである動的スケーリング則の検討はまだ十分にはできていない。また破壊に至るまでのダイナミクスもシミュレーションしており、破断前の性質もある程度明らかになりつつある。 並行して、同じ曲率をもつ2次元の球殻だが、力学モデルを少し変更し曲げ弾性を組み込んだモデルも準備を始めた。このモデルの研究により普遍性がより明らかになることを期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2次元球面における破壊現象の研究は、以前から構想を練っていたこともあり順調に進んでいる。また他のサブテーマに関しても本格的な研究に入る用意を順調に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は引き続き、研究目的を達成すべく、2次元球殻の準静的破壊に対する研究を進める。球殻の破壊では動的スケーリングの検証および破壊に至るダイナミクスの詳細を明らかにする。また並行して準備を始めた曲げ弾性を組み込んだモデルでも研究を始める。とくに、これまでの球殻では研究できなかった非対称な準静的外力による破壊を調べる。このような外力は氷天体などにかかる潮汐力を考えるときに重要であり、等方的な準静的破壊との差異を明らかにする。 また、サブテーマとしてのヒーリング効果のあるモデルに関して、研究を開始する。これまでに構築した確率モデルを発展させヒーリング効果を組み込み、破壊現象の普遍性、動的スケーリング則などを研究する予定である。 3次元の破壊現象に関しても準備を始めたい。昨年度から2次元の熱弾性による破壊の研究を少し始めている。この研究では先行研究によって示された破壊を表現できる連続体を離散化したセミマクロモデルに、熱弾性の効果を組み込み破壊の温度制御プロトコル依存性などを調べた。これを発展させて3次元のセミマクロな離散モデルに対して温度場の効果を組み込み熱伝導と破壊現象のカップリングによる破壊パターンの変化を調べたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年末に発注し年度内納入を予定していた並列計算機が、世界的部品不足のため納期未定となり年度内の導入が難しくなった。このため発注を見送り次年度使用額が発生した。今年度、発注予定の計算機を、繰り越し分も含めてより高性能なものにアップグレードし使用する予定である。
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