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2020 年度 実施状況報告書

生体分子の動力学計算に対する階層的データマイニングの開拓と薬理の動的機構への応用

研究課題

研究課題/領域番号 19K03653
研究機関奈良女子大学

研究代表者

戸田 幹人  奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (70197896)

研究分担者 森藤 紳哉  奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (30273832)
鎌田 真由美  京都大学, 医学研究科, 准教授 (70749077)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード大自由度カオス / 時系列解析 / 生体分子 / 次元圧縮 / 分子内非平衡 / 集団運動
研究実績の概要

生体分子の機能発現に関して、実験家を含めた共同研究の成果を論文として発表した。この研究では、DNA結合分子で実験的に発見された詳細釣り合いの破れに関して、理論的な説明を与えることが目的である。DNA分子に沿った1次元的な拡散過程と、タンパク質・DNA間における反応過程(結合と解離)を含む数理モデルを考え、このモデルから実験とよく合う理論式を導出した。この導出は非平衡定常過程が存在することを前提としている。この非平衡性の存在に関しては、大自由度系における時間スケールの階層構造に依拠したラチェット機構を、作業仮説として提出した。従来、ラチェット機構は、温度や化学ポテンシャルなど、分子を取り囲むマクロな環境における非平衡性を前提として考えられることが多い。本研究におけるラチェット機構は、Van Kampen の著書にある議論に示唆されたもので、分子内非平衡と呼ぶべき状況を考えている。即ち、生体分子のような大自由度の系では、分子内に様々な時空間スケールが存在し、考えている反応過程が生じる時間スケールにおいて、必ずしも分子内のすべての自由度が熱平衡を達成しているとは限らない。このような状況では、集団的自由度の挙動に応じて、反応過程の実効的ポテンシャル面が動的に変動することが考えられる。そのような場合に、反応過程において詳細釣り合いが破れる状況が存在する。以上の考えに基づいて、我々はラチェット機構を提案したのである。具体的にはラチェット機構を生み出す分子レベルのメカニズムとして、DNA分子やタンパク質分子における集団運動を考えている。以上の研究に加え、心拍の時系列データから不整脈の発生を予測する時系列解析、特異点解析を応用したバンド構造理論、気象のシミュレーションデータに対するウエーブレット変換を用いた解析、大自由度結合振動子系に対するネットワーク理論を用いた時系列解析の研究を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2年目の目標として、生体分子の集団運動を抽出する新たな手法を開拓しテストをする予定であったが、現状ではまだテストランの手前にある。原因として、AI関連の研究を含めて、複数のアイデアの間で絞り込みができていないことが挙げられる。3年目には、それぞれのアイデアに関してテストプログラムを実装し、アイデアの検証を行う予定である。

今後の研究の推進方策

大自由度力学系である生体分子の運動に関して、分子動力学計算で得られる大規模時系列データから、時空間の階層性を抽出する手法を開拓するために、ウエーブレット変換や、データ駆動によって構築する基底を用いる手法を試している。多様体抽出は、Artificial Intelligence (AI)においても盛んに研究されている。その方面では、たとえば畳込み型ニューラルネットワークとウエーブレット変換の関連、リザーバーコンピューターと大規模カオス力学系の次元縮約の関連など、本研究にも重要となるであろう研究成果が多々ある。これらの分野における最新の知見をも取り入れるべく努めている。

次年度使用額が生じた理由

海外出張を計画していたが、コロナ禍のため中止した。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Dependence of DNA length on binding affinity between TrpR and trpO of DNA2020

    • 著者名/発表者名
      Nobuo Shimamoto, Mikito Toda, Shigetoshi Nara, Tamiki Komatsuzaki, Kiyoto Kamagata, Takashi Kinebuchi, Jun-ichi Tomizawa
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 10 ページ: 15624

    • DOI

      10.1038/s41598-020-71598-3

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Flickering of cardiac state before the onset and termination of atrial fibrillation2020

    • 著者名/発表者名
      Boon Leong Lan, Yew Wai Liew, Mikito Toda, Suraya Hani Kamsani
    • 雑誌名

      Chaos

      巻: 30 ページ: 053137

    • DOI

      10.1063/1.5130524

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Application of Singularity Theory to Bifurcation of Band Structures in Crystals2020

    • 著者名/発表者名
      H. Teramoto, A. Tsuchida, K. Kondo, S. Izumiya, M. Toda, T. Komatsuzaki
    • 雑誌名

      Journal of Singularities

      巻: 21 ページ: 289-302

    • DOI

      10.5427/jsing.2020.21p

    • 査読あり
  • [学会発表] 複雑ネットワーク上の結合振動子における同期現象の解析;グラフの特性と同期現象の関連性2021

    • 著者名/発表者名
      山崎真由美, 戸田幹人
    • 学会等名
      日本物理学会年会
  • [学会発表] 超水滴法を用いた雨粒の成長過程と大気の運動-wavelet変換を用いた解析-2021

    • 著者名/発表者名
      下村真唯, 島伸一郎, 戸田幹人
    • 学会等名
      日本物理学会年会
  • [学会発表] タンパク質・DNA間の結合に新機構を発見:分子の揺らぎを利用するラチェットの可能性2020

    • 著者名/発表者名
      嶋本伸雄, 戸田幹人, 奈良重俊, 小松崎民樹, 鎌形清人, 杵淵隆, 富澤純一
    • 学会等名
      東北大学多元物質科学研究所研究発表会
  • [学会発表] 複雑ネットワーク上の結合振動子における同期現象の解析2020

    • 著者名/発表者名
      山崎真由美, 戸田幹人
    • 学会等名
      日本物理学会秋季大会
  • [学会発表] 超水滴法を用いた雨粒の成長過程と大気の運動2020

    • 著者名/発表者名
      下村真唯, 島伸一郎, 戸田幹人
    • 学会等名
      日本物理学会秋季大会

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公開日: 2021-12-27  

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