研究課題/領域番号 |
19K03655
|
研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
高橋 公也 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (70188001)
|
研究分担者 |
服部 裕司 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (70261469)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 流体音 / 管楽器 / 遅延方程式 |
研究実績の概要 |
九州大学のスーパーコンピューターを用いて圧縮性流体の大規模計算を行い、以下の項目の研究を行った。 1) LESを用いた3次元エアジェット楽器の解析: エアジェット楽器の音源となるエッジトーンの3次元モデルの解析を行い、エッジトーンの基本特性の再現に成功した。さらに、エッジトーンの振動を維持するために必要なフィードバック機構の解析のために、圧縮流体と非圧縮流体の計算結果を比較し、フィードバックの主要な部分は流体的なものであるが、音響的フィードバックの寄与も無視できないことを示した。特に、音響的なフィードバックは流速の上昇と共に重要になっていく。この成果の一部を国際会議等で発表した。さらに、前年度に引き続きフットの付いたオルガンパイプの解析を行い、成果発表に必要なデーターを作成した。 2) 音孔の開閉に伴う発振音の変化の再現: 2つの音孔を持つ管楽器の2次元モデルの解析を行い。閉じる時と開く時の動作の再現に成功した。この成果の一部を国際会議で発表した。遅延方程式モデルの解析では、音孔や管体の凹凸を考慮した正負の遅延があるモデルの解析を進め、logistic写像を組み込んだ場合には、2つの固定点が交代分岐点近傍で同時に不安的化して発振が起きなくなることを発見し、この成果を原著論文で公表した。 3) シングルリード木管楽器と金管楽器のマウスピース内での音の発生: ホルンのマウスピースおよびオーボエリードの2次元モデルを圧縮性DNSを用いて解析した。いずれも口腔を取り付けたモデルで、現実に近い波形を再現することに成功し、その成果を国際会議で発表した。 4) 音響機器の解析: バスレフ型スピーカーのポートノイズの解析を行い、ポートノイズの再現に成功した。熱音響エンジンの解析を行い、音波発生の初期過程の再現に成功した。さらに、これらの成果を国際会議で発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) LESを用いた3次元エアジェット楽器の解析: エアジェット楽器の音源となるエッジトーンの3次元モデルの解析を行い、エッジトーンの基本特性の再現に成功しただけでなく、エッジトーンを発生するジェット振動を維持するために必要なフィードバック機構の解析を行えたことは、大きな進展である。この成果の一部を国際会議等で発表した。さらに、フットの付いたオルバンパイプの解析では、成果公表に必要なデーターがほぼ揃った。したがって、ほぼ予定通り進展している。 2) 音孔の開閉に伴う発振音の変化の再現: 2つの音孔が付いた楽器のモデルの解析では、音孔を閉じるだけでなく、開く場合の動作を再現する手法を確立したのは大きな進展である。これの成果の一部を国際会議で発表した。遅延方程式モデルの解析では、logistic写像を組み込んだ正負の遅延を持つモデルの解析の成果を原著論文で公表した。したがって、ほぼ予定通り進展している。 3) シングルリード木管楽器と金管楽器のマウスピース内での音の発生: ホルンのマウスピースの解析に加え、発展課題としてオーボエリードの解析を行い、 これらの成果を国際会議で発表した。したがって、ほぼ予定通り進展している。 4) 音響機器の解析: 発展課題であるバスレフ型スピーカーのポートノイズの解析と熱音響エンジンの解析を行い、その成果を国際会議で発表した。この点では、当初の計画以上に進んでいる。 これらの成果により、研究は予定通り進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの成果をもとに以下の研究を行う。 1) LESを用いた3次元エアジェット楽器の解析: フットの付いたオルガンパイプモデルの解析結果をForum acusticum2023で発表する。さらに、原著論文での発表を目指す。さらに、その成果のオルガンパイプ設計への応用を考える。エアジェット楽器の音源であるエッジトーンの解析をまとめ成果発表を行う。オルガンパイプのジェット流速に対する音響強度の変化の解析を行い、エッジトーンとの違いを解明する。実験では、オルガンパイプとエッジトーンの音響強度の変化に明確な違いがあることが示されている。したがって、これらの違いを考えることは、オルバンパイプ等のエアジェット楽器の発音機構の重要な課題であると考えられる。 2) 音孔の開閉に伴う発振音の変化の再現: 2つの音孔がついたエアジェット楽器の解析を進め、音孔を開閉したときの演奏音の再現を目指す。遅延方的式モデルの解析を進め、ICIAM2023で成果発表を行う。 3) シングルリード木管楽器と金管楽器のマウスピース内での音の発生: オーボエリードの運動をより精密に再現するモデルを開発し、その成果を国際会議等で公表する。 4) 音響機器の解析: 発展課題であるバスレフ型スピーカーのポートノイズの解析と熱音響エンジンの解析を進め、その成果を国際会議等で公表する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため国際会議ICA2022(韓国)にonline参加した。そのために確保していた旅費を、次年度の研究経費に繰り越した。繰越金は、2023年度に必要な消耗品と国際会議参加に必要な費用に当てる。
|