研究課題/領域番号 |
19K03656
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
山本 健 琉球大学, 理学部, 准教授 (00634693)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 確率モデル / 社会物理学 / データ解析 / 対数正規分布 |
研究実績の概要 |
乗算的な確率過程の理論的な解析をおこない、その結果を用いて社会的データの解析をおこなった。 独立かつ同分布にしたがう確率変数を乗算していく確率過程では対数正規分布が導かれ、さらに確率変数に下限値を設定すると分布はべき分布に変化することが知られている。本研究では、下限値をサンプルごとに変化させる「可変下限値」の考え方を導入した乗算的確率過程の解析をおこなった。得られた確率分布は市町村ごとの従業者数や国立大学法人の運営費交付金などのデータの分布をうまく表しうることを明らかにした。この結果に関する論文は英文学術雑誌に掲載決定となり、近日中に出版される見込みである。 乗算的確率過程に対して、ステップ数(あるいは時間)が指数的な分布にしたがう場合、確率変数の定常分布はべき乗で減衰する裾をもつことが知られ、この分布は2重パレート分布とよばれる。本研究では、乗算的確率過程のステップ数が一様分布にしたがうとしたモデルの解析をおこなった。確率分布の式を導出し、モーメントの計算などから分布の特徴を考察した。得られた確率分布は市町村ごとの備品購入費などのデータにみられる分布とよく一致することを確認できた。この結果は社会物理学の研究会で口頭発表し、論文作成に向けてさらなる計算と解析を進めているところである。 さらに、2重パレート分布をベースにした市町村の人口分布の解析を構想しており、モデルの妥当性を実データとの比較から検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2重パレート分布との関係などの着眼点を得て、研究の新たな方向性を見出すことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
人口の移動をベースとした簡略化した確率モデルの構築と解析を実施する。モデルは2重パレート分布と関係があると予想しており、2重パレート分布と実際の人口分布の比較をおこない、さらにモデルの解析結果についてより詳細に比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は、新型コロナウイルス感染症により学会や研究会がオンライン開催となったためである。 次年度は現地開催される国内学会等が増える見込みであるため、成果発表にかかる旅費として使用する計画である。ただし、国内の感染状況が悪化し、学会等がオンライン開催となった場合は、物品の購入に充てる。
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