研究実績の概要 |
今年度は1次元格子上の臨界現象とその次元性について調べるために, 1次元長距離パーコレーション模型の臨界現象について調べた.
1次元長距離パーコレーション模型は2点間の格子点の接続確率が距離のべきに反比例するような模型である. 接続確率が小さい場合には, クラスター(接続されている格子点のかたまり)のサイズは有限に留まるが, 接続確率を十分に大きくするとクラスターは系のサイズと同程度になり, そのような状態をパーコレートしたと言う. 接続確率のべきが十分に大きい場合には, 系は1次元的で, 接続確率が1より小さな場所でつながりが切れ, クラスターは有限に留まり, 相転移はないが, べきを小さくしていくと, ある値で相転移が生じるようになる. 1次元長距離パーコレーションで見られる相転移は(1) 相関長が指数関数的に発散するBerezinskii-Kosterlitz-Thouless(BKT)的転移, (2) 接続確率のべきに依存する2次相転移, (3) 接続確率のべきに依存しない平均場的2次相転移, の3種類あることが予想されている.
これらの相転移について最近イタリアのグループにより数値的研究がなされたが, 検証されていない仮定に基づいた解析が行われていたのとBKT的転移については調べられていなかったので, 相関比を用いた有限サイズスケーリング解析を行った. 解析の結果, 上記(1)のBKT転移は予想通り存在することが確認でき, (2)の接続確率のべきに依存する2次相転移については先行研究と同等の結果を得た. 一方, (3)の相転移については先行研究と明らかな相違が見つかった. 先行研究との相違については境界条件の違いに起因しているものと推測しているが, 現在その検証を行なっているところである.
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