研究実績の概要 |
今年度は昨年度から引き続き1次元長距離パーコレーション模型の臨界現象, 特に数値計算による先行研究との相違が何に起因しているかを調べた. 1次元長距離パーコレーション模型はくりこみ群による解析的な先行研究があり, その結果によると長距離の接続確率の減衰が十分に小さな領域では相転移は平均場的になり, 臨界現象は平均場の普遍クラスに属することが期待される. 長距離の接続確率の減衰が小さくなることは, 相互作用で見た空間次元が大きくなることに相当しており, くりこみ群による解析は妥当なものと考えられる.しかしながら数値計算による先行研究ではくりこみ群とは異なる結果を示しており, また昨年度私が同様の数値計算から得られた解析結果はくりこみ群の結果とも, 数値計算による先行研究の結果とも異なっていた. これらの相違を吟味するために, 有限サイズ補正に注意して解析すると, くりこみ群による解析と一致する結果が得られた.
また, 視覚情報と臨界普遍性の関係について調べるため, 3次元イジング模型の実空間数値くりこみ群の方法に関する研究を行った. 2次元イジング模型では実空間数値くりこみ群の方法がうまくはたらく一方で, 3次元イジング模型の実空間数値くりこみ群の方法はうまく行かないことが知られている. 近年の機械学習の進展により, 実空間くりこみ(ブロックスピン変換)のパラメータを変えるなどする改良が試みられているが, 決定的な方法はまだ見つかっていない. 改良のための指針とその数理について考察し, 数値計算を進めているところであるが, まだ検証を必要とする内容もあり, 研究発表には至っていない.
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