研究課題/領域番号 |
19K03667
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
小竹 悟 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (40252051)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 数理物理 / 解ける量子力学模型 / 例外直交多項式・多添字直交多項式 / アスキースキームの直交多項式 / 離散量子力学 / 再帰関係式 / 形状不変性 / 閉関係式 |
研究実績の概要 |
次数に欠落があるにも拘らず完全系をなし,2階の微分方程式または差分方程式を満たす新しいタイプの直交多項式(例外直交多項式,多添字直交多項式)の性質を調べる事と,これらの直交多項式が現れる解ける量子力学模型についての知見を得る事が本研究の目的である。 通常の直交多項式ではその特徴付けである三項関係式が重要であるが,新しいタイプの直交多項式はもっと項数の多い再帰関係式を満たしている。変数係数と定数係数の2種類があり,双スペクトル性など応用上は定数係数のものが重要となる。座標が連続変数の場合に,座標の範囲が有限な場合にはヤコビとアスキー・ウィルソン,半無限の場合にはラゲールとウィルソン多項式に対して,ケース(1)の多添字直交多項式が量子力学模型の変形を利用して構成され,定数係数の再帰関係式が調べられていた。座標の範囲が無限の場合のケース(1)の多添字直交多項式は構成されておらず,構成が待たれていた。2019年度の研究で,連続ハーンとマイクスナー・ポラツェーク多項式に対して,ケース(1)の多添字直交多項式を離散量子力学模型の変形を利用して構成した(雑誌論文1番目・学会発表1番目)。これまでのケース(1)の多添字直交多項式の構成では模型の変形の中間段階でも非特異な模型が得られていたが,座標の範囲が無限の連続ハーンとマイクスナー・ポラツェーク多項式の場合には中間段階では特異な模型になってしまう事があるため,研究が後回しになっていた。今回は,ケース(2)の多項式の場合に行われている様に,中間段階を気にせずに最終段階の模型に注目する事で多添字直交多項式を構成した。 連続ハーンとマイクスナー・ポラツェークのケース(1)の多添字直交多項式の再帰関係式及び閉関係式・生成消滅演算子についても結果を得て発表している(学会発表2番目)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既知の量子力学模型を変形する事で得られた,多添字直交多項式等の新しい直交多項式の性質を調べ,それらで記述される解ける量子力学模型についての知見を得る事が本研究の目的である。先ずは多添字直交多項式そのものが持つ性質について明らかにしておく事が重要であり,特に0次からl-1次までの次数が欠落したケース(1)の多添字直交多項式を考える。 通常の直交多項式は三項関係式で特徴付けられるが,通常の直交多項式ではない多添字直交多項式はもっと項数の多い再帰関係式を満たしている事をこれまでの研究で明らかにして来た。座標が連続変数の場合に,座標の範囲が有限な場合にはヤコビとアスキー・ウィルソン,半無限の場合にはラゲールとウィルソン多項式に対して,ケース(1)の多添字直交多項式を量子力学模型の変形を利用して構成し,定数係数の再帰関係式を調べたが,座標の範囲が無限の場合のケース(1)の多添字直交多項式は構成されていなかった。その理由の一つは,座標の範囲が有限または半無限の場合には模型の変形の中間段階でも非特異な模型が得られたのに対して,座標の範囲が無限の場合には中間段階では特異な模型になってしまう場合があるからである。 2019年度の最初の目標は座標の範囲が無限の場合の連続ハーンとマイクスナー・ポラツェーク多項式に対してケース(1)の多添字直交多項式を構成し,再帰関係式を調べる事であった。ケース(2)の多項式の場合に行われている様に,中間段階を気にせずに最終段階の模型に注目する事で,連続ハーンとマイクスナー・ポラツェーク多項式に対してケース(1)の多添字直交多項式を構成する事が出来た。また,再帰関係式を調べ,離散量子力学模型の閉関係式及び生成消滅演算子の構成も行った。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書の研究実施計画に書いた話題について研究を進めて行く事に特に変わりはないが,その順序については現在の進行状況を勘案して多少入れ替えていく。 アスキースキームの直交多項式に対してケース(1)の多添字直交多項式を多くの場合に構成したが,直交関係がジャクソン積分で与えられるビッグq-ヤコビ多項式等の場合は未だ十分には調べられていない。構成が可能なのか不可能なのか,可能ならば具体的にどうすればよいのかを明らかにしたい。この問題を考えながら,定数係数再帰関係式の具体形についての考察を進めて行く。
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備考 |
2019年8月28日に「中部夏の学校2019:『深層学習への入門:理論と実際』」において,研究発表「新しい解ける離散量子力学模型と多添字連続Hahn直交多項式」を行った。
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