次数に欠落があるにも拘らず完全系を成し,2階の微分方程式または差分方程式を満たす新しいタイプの直交多項式である例外直交多項式・多添字直交多項式の性質を調べる事と,それを利用して解ける量子力学模型を拡張するという目標の下で,研究成果を上げて来た。連続ハーン多項式を基にして新しい多添字直交多項式と解ける模型を構築し,その定数係数再起関係式を得た。この様な模型の変形ではロンスキアンやカソラティアンが大切な役割を果たすが,カソラティアンに対して一般的な恒等式を示した。少し趣きの異なる研究として,ラゲール多項式で記述される動径振動子の系を,エルミート多項式で記述される調和振動子による自由振動子で記述する事が出来る事を示した。最終年度に掲載された論文では,直交多項式を利用して解けるマルコフ連鎖の具体例を数多く構成した。これは直交多項式の重み関数の"畳み込み"(畳み込みの変形版)を利用して,固有関数が直交多項式で与えられる遷移確率行列を構成したものであり,その固有値が超幾何級数と関連している。投稿中の論文として,虚数シフトの離散量子力学模型に現れる多添字直交多項式の零点を用いた離散直交関係を示した研究(これは掲載が決定した),実数シフトの離散量子力学模型に現れる有限型の直交多項式の因子化を示した研究,それを用いた状態追加のダルブー変換を調べた研究,別のタイプの前進後進シフト関係式を調べた研究がある。これらの研究を通して,多添字直交多項式の性質の解明と解ける量子力学模型の拡張に貢献が出来たと考えられる。
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