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2020 年度 実施状況報告書

流れる固体の物理:「粉体力学」の確立に向けた包括的研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K03670
研究機関大阪大学

研究代表者

大槻 道夫  大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (30456751)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード粉体 / レオロジー / ジャミング
研究実績の概要

本研究は二つの課題を通じて研究を進める計画であった。
一つは「ジャミング転移を含む粉体の特異的な力学的特性の微私的解明」である。こちらは、特に粉体の固体的な力学的特性に関して進展があった。粉体に剪断歪を加えた場合、小さい変形では線形弾性応答を示す一方、変形が大きくなると非線型応答が発生する。従来はこの非線型応答が粒子間配置の塑性変形に伴う降伏が原因だと理解されていたが、こうした微視的塑性変形が発生する前にソフトニングと呼ばれる非線型応答の発生が出ることを理論的、数値的に発見し、論文を投稿中である。これらの摩擦に対する影響も調べ、そちらはEPJEに掲載が決定されている。
もう一つの課題は「粉体のマクロな流動に関連した多様な問題の解明」というものである。こちらは、水と粉体を混ぜたペーストで発生する記憶効果という現象に関して、塑性変形を仮定した連続体モデルを提唱し、それから記憶効果が残留応力に由来して発生することを示した。従来も同様のモデルがいくつか提唱されているが、その適用は非常に簡略化された設定が必要で、実験で発生する多様な現象の再現は不可能であった。本研究はそれらを超えてより一般的な状況での記憶効果の解明に成功しており、その結果も現在論文をまとめて投稿中となっている。こうした連続体記述に基づいた現象の解明は本研究の最終的に目指すところであり、この研究の成果はその目標へのさらなる進展を示している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画の二つの課題についてそれぞれ顕著な成果があった。

今後の研究の推進方策

今年度は実際に論文がでた成果以外にも、いくつかの研究を同時並行で進めている。具体的にはこれまでのソフトニングの理論をYielding転移にまで発展させる研究と、粉体乱流の連続体記述の研究を進展させている。また新たに粉体実験の実験系の立ち上げを進めている。

次年度使用額が生じた理由

出席予定だった国際会議が中止となったため、そのために確保していた旅費が差額となった。今年度に論文投稿料などとして使用する予定である。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (11件)

  • [雑誌論文] hear modulus and reversible particle trajectories of frictional granular materials under oscillatory shear2021

    • 著者名/発表者名
      Michio Otsuki, Hisao Hayakawa
    • 雑誌名

      European Physical Journal E

      巻: - ページ: -

    • 査読あり
  • [学会発表] 周期的剪断を受けた高密度粒子系におけるループ軌道と異常弾性応答2021

    • 著者名/発表者名
      大槻道夫、早川尚男
    • 学会等名
      日本物理学会第76回年次大会(2021年)
  • [学会発表] 濡れた粉体系の弾性応答2021

    • 著者名/発表者名
      吉井究、大槻道夫
    • 学会等名
      日本物理学会第76回年次大会(2021年)
  • [学会発表] 付着力を持った粉粒体のふるいによる分離現象2021

    • 著者名/発表者名
      鯨崎佑介, 大槻道夫
    • 学会等名
      日本物理学会第76回年次大会(2021年)
  • [学会発表] 平板間の粉体流の連続体解析2021

    • 著者名/発表者名
      黒田遼, 大槻道夫
    • 学会等名
      日本物理学会第76回年次大会(2021年)
  • [学会発表] コロイド液体の変位相関のモデルに現れる係数の濃度依存性2021

    • 著者名/発表者名
      大信田丈志, 大槻道夫, 後藤晋, 松本剛
    • 学会等名
      日本物理学会第76回年次大会(2021年)
  • [学会発表] 周期的剪断を受けた粉体のSofteningとループ軌道2020

    • 著者名/発表者名
      大槻道夫、早川尚男
    • 学会等名
      日本物理学会2020年秋季大会(オンライン)
  • [学会発表] 濡れた高密度粉体系のレオロジー2020

    • 著者名/発表者名
      吉井究、大槻道夫
    • 学会等名
      日本物理学会2020年秋季大会(オンライン)
  • [学会発表] 平板間における粉体流動の充填率依存性2020

    • 著者名/発表者名
      黒田遼, 大槻道夫
    • 学会等名
      日本物理学会2020年秋季大会(オンライン)
  • [学会発表] ふるいによる粉体分離の最適化2020

    • 著者名/発表者名
      鯨崎佑介, 大槻道夫
    • 学会等名
      日本物理学会2020年秋季大会(オンライン)
  • [学会発表] コロイド液体における変位相関の粘弾性モデルの数値的検証2020

    • 著者名/発表者名
      大信田丈志, 大槻道夫, 後藤晋, 松本剛
    • 学会等名
      日本物理学会2020年秋季大会(オンライン)
  • [学会発表] オイラー、ラグランジュ記述の乱流速度フーリエ成分の相関関数と線形応答関数の時間スケール2020

    • 著者名/発表者名
      松本剛, 大槻道夫, 大信田丈志, 後藤晋
    • 学会等名
      日本流体力学会 年会2020(オンライン)

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公開日: 2021-12-27  

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