研究課題/領域番号 |
19K03670
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大槻 道夫 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (30456751)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 粉体 / レオロジー / ジャミング転移 / 塑性 |
研究実績の概要 |
本研究では「粉体力学」の確立を目指して『ジャミング転移を含む粉体の特異的な力学的特性の微視的解明』と『粉体のマクロな流動に関連した多様な問題の解明』の二つの課題を連携させがら進めている。 最初の力学特性の微視的解明の課題に関しては、充填率の高い固体的な状態の粉体に対して周期的な剪断を加えた場合の応答に関する研究の論文を出版した。構成要素の粒子が結晶構造をとる一般の固体では、歪みが小さい場合は単純な線形応答が現れる一方、歪みが大きくなるにつれて構成粒子ネットワークの塑性変形を伴う非線型応答が現れることが知られている。ところが、我々の研究で、構成粒子が非結晶構造をとる粉体などの物質では、そうした塑性変形が発生しなくても非線型応答が発生するというソフトニングと呼ばれる現象が普遍的に発生することがわかった。粉体の場合、こうした非線型応答は粒子間摩擦にも大きく依存する。このような非線型応答に関して、構成粒子の軌道の特異的な振る舞いがその原因であることを理論的に解明した。 また、二つ目のマクロな流動に関連した課題では、粉体と水を混合したペーストに関する研究成果を論文として出版した。これまでの力学的特性の微視的な研究から、こうしたペーストはある種の塑性流体として取り扱えることを知見として得ていたので、それをもとに塑性を持つ連続体としてペーストをモデル化し、解析計算からこのペーストを外力で流動化させた場合、記憶効果として内部に残留応力が発生することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように、論文としての成果発表も含めて満足な成果が出ていると考えている。本来は、この成果を海外の研究会で発表し、そこで専門家からのフィードバックを受けてさらに研究を発展させる予定であったが、コロナで海外渡航が制限されている状況だっため、そのような機会を得ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本来は前年度が最終年度となっていたが、予定していた海外研究会への参加発表が行えなかった。最近になって渡航条件が緩和されたこともあるので、研究機関の延長を申請し、研究成果の国際研究会での発表と同時に、これまでの研究成果の発展を考えている。具体的には、振動剪断を受けた粉体中の粒子の軌道を簡単なモデルで再現し、そのモデルに基づいて力学的応答を計算する微視的な理論解析の実行を行う。また、ペーストの残留応力に関しても、より実験に近い状況での解析計算を既に試みており、その成果の発展と論文出版を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナによって予定していた海外の研究会への参加ができなかった。そのため、その計画を今年度に差し替え、その費用としての使用を計画している。
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