研究課題/領域番号 |
19K03672
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
福本 康秀 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (30192727)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 予混合燃焼 / 層流火炎速度 / 圧縮性 / 体積的熱損失 / ケルビン・ ヘルムホルツ不安定性 / 浅水流 / リチャーズ方程式 / 陽的差分法 |
研究実績の概要 |
予混合燃焼火炎面の層流火炎速度に対する弱い圧縮性による補正項を計算した。圧縮性により、圧力変動が熱伝導方程式に吸熱項として現れる。これは体積的熱損失を自然に実現し、ナビェ・ストークス方程式を熱伝導方程式に結合させる。ごく薄い反応領域において、燃料物質の拡散方程式を加えた連立方程式系を接合漸近展開法によって解き、圧縮性効果によって既燃側で温度低下が起こり、層流火炎速度が減少することを示した。これは、Mallard-Le Chatelierの現象論的関係に解析表現を与える。温度低下が臨界値を越えると、消炎が起きることも示した。 長波近似のもとで、余熱領域において、同じ燃焼のモデル方程式系の漸近解を求め、火炎速度に対する火炎面の曲率の効果を計算した。プラントル数が3/4より大きいとき、圧縮性によりマークシュタイン長が増大する。また、火炎面のダリウス・ランダウ不安定性に対する外部磁場による抑制効果を調べた。磁場が火炎面に斜めには配位するとき、火炎面において、接線速度の不連続性が誘起され、ケルビン・ヘルムホルツ不安定性を引き起こすことを明らかにした。 浅水流中の剪断層を接線速度の不連続面としてモデル化して、不連続面の波状変形に関する安定性に対する深さの違いの効果を調べた。接線速度の跳びがある臨界値を越えると、ケルビン・ ヘルムホルツ不安定性は抑制される。臨界値のフルード数は1よりも大きいが、両側の深さが等しいときに最低値2.82をとることを見出した。また、不連続面を有限幅の単純剪断層で置き換えると、固有関数がWhittaker関数を用いて書き下させることを見出した。すべてのフルード数で新たな不安定をもたらす。 重力下での水の不飽和土壌への浸透を記述するのはリチャーズ方程式という非線形放物型偏微分方程式である。時間微分項の特異性を避ける陽的差分法を構成し、スキームの安定性を証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
層流火炎速度に対する圧縮性による補正項の計算はこの分野のブレークスルーで、層流火炎速度の低下をMallard-Le Chatelierの理論によって解釈することによって、一連の研究が完結した。ダリウス・ランダウ不安定性において、媒質を電磁流体(MHD)にとって、外部磁場の効果を入れるのは当初予定しない研究で、ケルビン・ヘルムホルツ不安定性が絡んでくるとは、予期していなかった。 水の不飽和土壌への浸透の数値解析的研究も当初計画にはなかったが、不飽和・飽和界面のダイナミックスという新たな界面の問題の所在を提起している。
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今後の研究の推進方策 |
トポロジカル渦度ダイナミックスの圧縮性流体への拡張に本腰を入れる。バロクリニック流体やMHDの場合にも、圧縮性効果を含む場合のトポロジカル不変量をネーターの定理によって導く。これを陽に取り込む形で、流体のオイラー方程式、MHD方程式の南部力学表現を導く。この研究を完成させると、従来、いくつかの形で提示されているリー・ポアソン方程式から、望ましいものが選定されるであろう。このリー・ポアソン方程式から、流体・電磁流体に対して、等循環・等磁気循環攪乱が圧縮性がある場合に拡張でき、しかも、形式的・機械的に導けるであろう。これをもとに、定常解の存在定理を検討し、定常解まわりの攪乱場のエネルギーの公式を導く。これが差し当たりの計画である。 この結果をもとに、圧縮性燃焼界面や浅水流の速度不連続面の安定性理論を深めていく。
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