第一原理計算を用いて化合物の第一原理正則溶体模型導出を引き続き行う。TiHをベンチマークとして計算手続きを具体的に示す。まずギブス自由エネルギー評価を行う。自由エネルギーは,エンタルピー項,フォノン項,固溶エントロピー項の三つからなり,これらすべてを第一原理計算より評価する。エンタルピー項は規則状態と完全固溶状態の電子エネルギーから評価する (ソフトウェアxTAPPおよびVASP使用)。フォノン項も同じく規則状態と完全固溶状態の第一原理フォノン計算から評価う (ソフトウェアPHONOPY使用)。固溶エントロピー項はクラスター展開・変分計算を用いて評価する (自作コード作成)。この計算のために,面心立方構造 (fcc) をとる金属の格子間サイトにおいて,四面体サイトに水素あるいは空隙を挿入させて作った構造データ (この構造データ系列を fcc-四面体系列と書く) を大量発生させる。ソフトウェア ATAT を用いてこの構造系列発生を行う。この例では構造データ数は132である。fcc-四面体系列以外に,fcc-八面体系列,体心立方 (bcc)-四面体系列,bcc-八面体系列,六方最密充填 (hcp)-四面体系列,hcp-八面体系列などがある。各構造系列に対して第一原理計算を行い,構造・エネルギーデータを得る。これらのデータに対してクラスター展開法を用い展開係数を決定する。各構造系列のクラスター展開関数に対してクラスター変分法を実施し,第一原理自由エネルギーを評価する。最後にこの自由エネルギーに対して正則溶体近似自由エネルギー関数のパラメータをフィッティングより求める。これらの関数を用いてPANDATより熱力学状態図を作成し,実験と比較する。
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