研究課題/領域番号 |
19K03676
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
末松 信彦 明治大学, 総合数理学部, 専任准教授 (80542274)
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研究分担者 |
小田切 健太 専修大学, ネットワーク情報学部, 准教授 (20552425)
池田 幸太 明治大学, 総合数理学部, 専任准教授 (50553369)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自己駆動粒子 / 界面化学 / 走化性 / 確率統計 |
研究実績の概要 |
初年度に得られた実験的な成果と、それを説明する数理モデルの構築・数値計算結果・数理解析結果を踏まえて、論文にまとめる作業を行った。具体的には、鉄イオンの濃度勾配を用意した水相にフェナントロリン粒を浮かべ、その位置をトラッキングすることで、存在確率を実験的に求めた。鉄イオンの濃度勾配がない場合には空間対称な存在確率が得られたのに対して、勾配がある場合は濃度の低い領域に存在する確率が高かった。また、空間均一な場において、鉄イオン濃度を高くすると、間欠振動運動の周期が長くなることも確認した。また、間欠振動運動のジャンプの際の移動距離と濃度の関係を調べたところ、高濃度ほど短くなることも確認した。これらの実験結果を踏まえて、簡単な数理モデルを作成したところ、ジャンプ距離の濃度依存性だけでは実験とは逆の存在確率が得られることが明らかとなっている。この問題を解決するために、位置だけではなく、運動方向によってジャンプ距離が変わる効果が必要であることが数理的なアプローチから示された。これらの成果をまとめて論文を作成し、投稿の準備が整った。 さらに次のステップとして、多体系の実験をスタートした。つまり、これまで鉄イオン勾配を人為的に与えて、単体のフェナントロリン粒の運動を確認してきたが、均一な濃度場に置いて、複数のフェナントロリン粒を浮かべた場合の相互作用を確認した。これは、フェナントロリン粒が周辺の鉄イオンを消費することで濃度勾配が作られ、その濃度勾配を介して相互作用する粒である。今年度は、実験系を立ち上げたところで、系統的なデータは出ていないが、次年度(最終年度)に成果を出す予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、COVID-19の拡大防止の観点から、実験室に行く機会が激減したことに加え、講義等の通常業務も、対応を求められ、当初の予定よりも多くの時間を割くことが必要となり、予定通りに進めることができなかった。しかし、2年目ということもあり、初年度の成果を踏まえて論文執筆を進めることができた。今年度の遅れた分は、次年度に取り戻せるよう、計画を立て直している。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、書き上げている論文を出版できるように作業を進める。第二に、新規実験として、多体系への拡張を速やかに進める。具体的には、2体間の相互作用を明確にし、多体系における時空間パターンの観察へとつなげる。2体間の相互作用は、濃度場を介して行われる。この時、鉄イオンが消費されるとフェロインが生成され、赤色に呈色するので、濃度勾配の時間変化をビデオ撮影で解析することが可能である。鉄イオン濃度と2体間の距離をパラメータとして、引力・斥力の相互作用を解析する。 それらのデータを踏まえて、空間均一な鉄イオン水相におけるフェナントロリン粒の多体系の集団運動を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に予定していた実験を一部、行うことができず、次年度に実施することとしたため。なお、予定通りに実施できなかった理由は別途報告の通りである。
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