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2021 年度 実施状況報告書

トポロジカル量子相の理論的研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K03680
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

古崎 昭  国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 主任研究員 (10238678)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2024-03-31
キーワード脆いトポロジカル絶縁体 / トポロジカル超伝導体 / ジョセフソン効果
研究実績の概要

時間反転操作で対称でかつスピン軌道相互作用が無視できるほど弱い物質は、K理論にもとづくトポロジカル絶縁体の分類理論によれば、固体結晶の空間群対称性を考慮しても表面にディラック電子をもつようなトポロジカル絶縁体にはなり得ないことが知られている。しかしながら、上記の分類理論はバンド数によらない普遍的な性質を記述するものであり、バンド数を固定した場合にはある条件のもとでトポロジカル絶縁体と同様に質量0のディラック電子の表面状態を安定にもつことが可能である。このような、いわゆる「脆いトポロジカル絶縁体」を記述するminimal modelとして、ある軸の周りで回転対称な軌道自由度を擬スピンとしてもつ4バンドtight-binding模型を構築し、その表面ディラック電子状態の安定性とバルク電子状態のもつトポロジカル数について解析計算と数値計算を用いて調べた。回転軸に垂直な表面には回転対称性に応じた数のディラック・コーンが現れることを示した。
1次元トポロジカル超伝導体の標準模型としてKitaev模型を採用し、1次元のトポロジカル超伝導体/常伝導金属/トポロジカル超伝導体のジョセフソン接合系について理論解析を行った。特に、有限長の常伝導金属領域中に複数の離散準位がある状況を想定し、離散準位を介した共鳴的な直流ジョセフソン効果について研究を行った。常伝導領域のエネルギーの関数として、非共鳴から共鳴のパラメータについて摂動計算と数値計算を用いて半定量的にジョセフソン結合の大きさを決定した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

回転と時間反転で対称でスピン軌道相互作用の弱い絶縁体に対して、脆いトポロジカル絶縁体相の理論模型を構築できた。これは結晶の(点群)対称性によって保護された新しいトポロジカル絶縁体として、今後の物質探索に役立つ可能性がある。
また、量子多体系の基底状態に関するLieb-Schultz-Mattis定理についても考察を進めており、いくつかの新しい結果を得て論文を投稿できた。量子多体系のギャップ相のトポロジカルな相構造について新しい知見を得つつあり、さらなる展開が期待できる。
量子一次元系を2次元あるいは3次元的に並べて適当に結合させることによってフラクトン相を構成する模型を構築した。

今後の研究の推進方策

量子多体系の基底状態に関するLieb-Schultz-Mattis定理とその拡張に関する研究を継続して発展させる。特に、量子多体系の相構造について、トポロジカル相との関連に注意して研究を進める。これらの研究に関して、現在投稿中の論文の出版、および準備中の論文の投稿をなるべく早期に行う。
脆いトポロジカル絶縁体の模型のパラメータを変化させることにより、脆いトポロジカル絶縁体相と通常のトポロジカル絶縁体相の間の途中にあらわれる半金属相について調べる。
トポロジカル絶縁体の表面状態に対する乱れの効果について再検討を行う。

次年度使用額が生じた理由

COVID-19の感染予防のために、当初計画していた国際会議参加や研究打ち合わせのための国外および国内出張を全く行わなかったため旅費を使用できなかった。次年度夏以降に状況が許せば、積極的に国外や国内の会議・研究会に参加して情報収集および成果発表を行いたい。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Fragile topological insulators protected by rotation symmetry without spin-orbit coupling2021

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi Shingo、Furusaki Akira
    • 雑誌名

      Physical Review B

      巻: 104 ページ: 195114-1~18

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.104.195114

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Superconductor/normal-metal/superconductor junction of topological superconductors revisited: Fractional Josephson current, fermion parity, and oscillating wave functions2021

    • 著者名/発表者名
      Sumita Shuntaro、Furusaki Akira
    • 雑誌名

      Physical Review B

      巻: 104 ページ: 205431-1~14

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.104.205431

    • 査読あり
  • [学会発表] Fragile topological insulators protected by rotation symmetry without spin-orbit coupling2022

    • 著者名/発表者名
      Shingo Kobayashi and Akira Furusaki
    • 学会等名
      American Physical Society March Meeting 2022
    • 国際学会
  • [学会発表] General ingappabilities in antiferromagnetic systems beyond the Lieb-Schultz-Mattis theorem2021

    • 著者名/発表者名
      Yuan Yao, Akira Furusaki, and Masaki Oshikawa
    • 学会等名
      日本物理学会2021年秋季大会
  • [学会発表] 量子細線によるフラクトン相の構成I:セル状トポロジカル相による一般論2021

    • 著者名/発表者名
      藤陽平、古崎昭
    • 学会等名
      日本物理学会2021年秋季大会
  • [学会発表] 量子細線によるフラクトン相の構成II:フラクタル的な縮退を持つフラクトン相2021

    • 著者名/発表者名
      藤陽平、古崎昭
    • 学会等名
      日本物理学会2021年秋季大会
  • [学会発表] トポロジカル超伝導体を用いたSNS接合系における分数ジョセフソン効果の増強2021

    • 著者名/発表者名
      角田峻太郎、古崎昭
    • 学会等名
      日本物理学会2021年秋季大会
  • [学会発表] スピン軌道結合を持たない回転対称性に保護された脆いトポロジカル絶縁体2021

    • 著者名/発表者名
      小林伸吾、古崎昭
    • 学会等名
      日本物理学会2021年秋季大会

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公開日: 2022-12-28  

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