研究課題/領域番号 |
19K03684
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
越野 和樹 東京医科歯科大学, 教養部, 准教授 (90332311)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 導波路QED / 超伝導量子計算 / 量子光学 / 量子制御 |
研究実績の概要 |
量子計算を遂行するためには量子ビットに個別にゲートをかける必要がある.特に,集積化された固体量子ビットを用いて量子計算を遂行するためには,個別アクセスのために個々の量子ビットに制御ラインと呼ばれる導波路を結合させ,そこから制御パルスを照射する.ゲート時間を短くするためには量子ビット―導波路結合は強いほうが良いが,量子ビットの寿命を長くするためには量子ビットの導波路への輻射緩和を防ぐ必要があり,量子ビット―導波路結合は弱いほうが良い.このように,ゲート時間と量子ビット寿命にはトレードオフの関係がある. 本年度は,このトレードオフを解消する「ジョセフソン量子フィルタ」を理論面から提案した.本提案では,制御の対象とするデータ量子ビット(DQ)に半無限の制御ラインを接続し,同じ制御ライン上でDQの共鳴波長のおよそ半分の位置に,DQと同じ周波数をもつ別の量子ビットであるジョセフソン量子フィルタ(JQF)を結合させる.ただし,JQF-制御ライン結合をDQ-制御ライン間結合よりも遥かに大きくしておく(典型的には,前者が数百メガヘルツ,後者が数キロヘルツ).するとDQが励起状態,JQFが基底状態にあるとき,この状態は「反超放射状態」となり導波路へと輻射緩和しない.つまり,JQFの存在によりDQの寿命が無限大になる.一方で,DQへの制御パルスを照射すると,JQFはたちどころに飽和状態に達してパルスを透過させるため,ゲート時間はJQFの有無により変わらない.こうして,制御ラインにJQFを結合させることにより,ゲート時間と量子ビット寿命のトレードオフを打破できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ジョセフソン量子フィルタの動作原理である反超放射は,一次元量子光学系(導波路QED系)に特徴的なものであり,導波路QED効果の量子情報処理への応用を目指す,本申請課題の趣旨に沿った成果を生み出すことができたため.
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今後の研究の推進方策 |
近年の超伝導量子ビットの主流は,トランズモンと呼ばれる非調和性の小さな人工原子であり,原子の第2励起状態以上の存在が無視できない.よって原子を2準位で記述していた現行の理論を拡張し,第2励起状態以上の効果を議論する.また,超伝導量子ビットには制御ラインと読み出しラインという2種類の導波路が接続されていることが常である.これを一本化する可能性についても吟味する.
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:新型コロナウイルスパンデミックの影響により,年度末に予定していた海外出張が中止となり,旅費および研究会参加費の支出が想定よりも少なく済んだため.使用計画:本年度の旅費および研究会参加費として使用する.
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