研究課題/領域番号 |
19K03691
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
土屋 俊二 中央大学, 理工学部, 准教授 (80579772)
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研究分担者 |
山本 大輔 青山学院大学, 理工学部, 助教 (80603505)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | フラットバンドを持つ光格子 / 多成分超伝導体 / スピン自由度を持つボース超流動体 / ヒッグスモード |
研究実績の概要 |
一般にカゴメ格子やリープ格子といったフラットバンドを持つ光格子は複数の副格子を持ち、エネルギーバンドは副格子の数と等しい数にだけ分裂する。これまでの研究において、フラットバンドを持つ格子において超伝導が発現するためには、複数のバンドに属するフェルミ粒子がクーパー対の形成に関わっている必要があることが理論的に提唱されている。複数のバンドでクーパー対が形成されると、系は複数の異なるクーパー対から成る多成分の超伝導体と見なすことができる。そのため、複数のバンドやスピン自由度などの複数の成分から成る超伝導体の一般的な性質を明らかにすることは、フラットバンドを持つ超伝導体の性質を理解する上で大変重要である。2019年度は、主に多成分から成る超伝導、超流動体の性質に注目し、以下の1)~3)について研究を行った。 1)光格子中のスピン1を持つ超流動体の安定性:スピン1を持つボース粒子系において、有効的な時間依存Ginzburg-Landau方程式に基づいて集団モードを調べることにより、超流動流に対する系の安定性について解析を行った。その結果、ポーラー相と呼ばれる超流動相において、一次転移が起きる相境界近傍でスピン超流動流を流すと、超流動臨界速度がゼロになり、無限小のスピン流を流すと不安定化することがわかった。この結果は、これまで知られていない未知の超流動相が存在することを意味する。 2)光格子中の集団モードのトンネル効果:光格子中の超流動体において、ヒッグスモードのトンネル問題について調べた。その結果、ヒッグスモードがポテンシャル障壁を完全透過する可能性があることを示した。 3)2つのバンドからなる超伝導体の集団モード:2つのバンドを持つ超伝導体において、二つのバンドに属する超伝導ギャップの振幅の相対的な揺らぎに由来する新しいタイプのヒッグスモードが存在することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究テーマと深く関連しているが、当初の研究実施計画では予期していなかった研究において大きな進展があった(研究実績の概要参照)。しかし、そちらにエフォートが大きく割かれたために、本来の目標である光格子を用いたフラットバンドを持つ超流動体の解析については、当初の計画よりもやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
光格子を用いたフラットバンドを持つ超流動体の解析について、研究代表者は引き続きBdG方程式を用いた平均場理論により、非一様な超伝導状態の基底状態や転移温度を計算し、超流動流の存在下における超伝導状 態の安定性解析を行う。更に、2019年度に得られた多成分超流動体の安定性に関する知見に基づき、スピン超流動流に対する安定性についても解析を行う。また、研究分担者は、実空間動的平均場理論を用いた解析により非一様な超伝導状態の基底状態、転移温度を計算し、不純物の存在下における超伝導状態の安定性解析を担当する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月に予定されていたアメリカ物理学会、および日本物理学会に参加予定であったが、コロナウィルスの影響によりどちらもキャンセルとなったため、その分の旅費が残った。次年度に催される冷却原子気体関連の国際学会のための旅費、国内における研究打ち合わせのための旅費に使用する。
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