研究実績の概要 |
超伝導共振器中のマイクロ波量子状態について、最近では特に、量子コンピューティングへ向けた研究が活発に進められている。本研究では、我々の提案した手法 [Phys. Rev. A 99, 013827 (2019)] に基づいて、マイクロ波共振器中のマイクロ波シュレディンガー猫状態の制御を行うことを目指している。 上記の提案では、実験結果をよく記述する量子Rabiモデルというモデルを用いて共振器―量子ビット結合系を記述している。強結合系においてはJaynes-Cummingsモデルが広く用いられており、結合強度が比較的大きい場合は、回転波近似を用いない量子Rabiモデルが用いられる。しかし結合がいわゆる超強結合から深強結合とよばれる領域において、実際の電気回路を量子Rabiモデルで記述できるかどうかは自明ではない。そこで本年度は、共振器や量子ビットを構成するキャパシタやインダクタ、ジョセフソン接合などから成る電気回路に基づいて量子化モデルを導出し、それがあるパラメータ領域において量子Rabiモデルと同等であることを示した。また、上記の提案では、原理的には共振器と量子ビットの結合が大きいほど操作の効率が上がると考えられるが、共振器―量子ビット結合回路はその操作や読み出しのため外部の回路に結合している必要がある。そこで本年度は、共振器―量子ビット結合系の基底状態が外部との結合によりどのような影響を受けるかについて研究を行い、共振器-量子ビット結合系においてより高い“量子性”を得るためには、外部との結合の強さに依存した、共振器―量子ビット結合強度の最適値が存在することを示した。
|