II-V族半導体であるZn_3As_2に円偏光連続波レーザーを照射して、ワイル半金属を創成してその物理的性質および非平衡系における磁化発現の可能性などを調べた。この物質は平衡状態では自明絶縁体相(非トポロジカル相)にあるが、c軸(z軸)方向に4回回転対称性を有するため、連続波レーザー照射によりサイドバンド間の反転が生じ、上記対称性のためk_z軸上にバンド交差が発現し得ると考えられる。照射光が線偏光レーザーの場合、これは光創成されたディラック半金属相(フロケディラック半金属相)である。円偏光レーザーの場合、系の時間反転対称性が破れるため、このディラック交差対はアップスピンとダウンスピンに帰属した2対のワイル点に分離しワイル半金属相(フロケワイル半金属相)を生成する。kp摂動論による4バンドモデルに基づいてフロケハミルトニアンを構築して、フロケバンドならびに表面状態を数値計算した。さらにフロケバンドの解析的な近似式を導出して数値計算結果の解釈を行った。これらにより下記の物理が分かった。 (1)ワイル半金属相にはアップスピンとダウンスピンに帰属したフロケバンドが生成するが、前者には後者と異なりバンドギャップがほぼ閉じた円環上の交線が発現し、ノーダルライン半金属相の特徴を有している。 (2)両スピンのフロケワイル半金属相はレーザー周波数およびピーク電場強度に依存して発現および消滅し、レーザーによるトポロジカル秩序転移を示す。 (3)両スピンのフロケワイル半金属相にはフェルミアークを有する表面状態が発現するが、電子励起はダウンスピン状態間が優先的に起こるため表面状態にはダウンスピンに偏極した状態が支配的になる。よって、当該の非平衡状態には過渡的な磁化が発現することになる。 以上の成果を米国物理学会のPhysical Review B誌に投稿した。
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