前年度に、二硫化モリブデン薄片を使った電界効果デバイスでは、アルミニウム電極の場合、金電極のときと比較して5倍から10倍程度も高いキャリア密度が実現していることをホール効果測定によって示したが、前年度の実験で用いた試料では試料形状と電極配置の問題により、キャリア密度の測定誤差が大きかった。この測定誤差を減らすために、シリコン基板上に付着した大きめの二硫化モリブデン薄片に適合するサイズのホールバー配置の電極を作製し、電界効果デバイス試料を作った。この電極作製には、電子線リソグラフィーで設計・製作したフォトマスクを使用した。ホール効果測定の結果、キャリア密度として6×10^13 cm-2という値が得られた。この値は、金電極の場合の約10倍であり、アルミニウム電極の素子におけるキャリアドーピング効果を確かめることができた。次に、アルミニウムと同程度の仕事関数をもつチタンを電極としたデバイスを作り、伝導特性の測定を実施した。実験の結果、チタンの場合でもキャリアドーピング効果を示唆する伝導特性が観測され、チタン電極によってフェルミエネルギー制御がされていることが示された。チタン電極の場合、基板に電圧を印加するバックゲート制御では、オフ状態が出現しないが、イオン液体を利用するキャリア制御によって、オフ状態を実現できることがわかった。金電極とパラジウム電極の場合についても、イオン液体を利用するキャリア制御の実験を行い、電場誘起pn接合を実現できることを示した。金電極とパラジウム電極の間で電界効果特性の閾値電圧が異なることを予想したが、顕著な違いは見られなかった。
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