光量子情報通信では、1.5μm帯域が情報の損失が少ないことから情報の伝送で使用される。現在、情報伝送間を中継する装置では可視光波長域を発光するイオンや原子が使用される。そのため、通信上に情報を送るためには可視光と1.5μm帯域で光波長変換が必要となる。本研究では、1.5μm帯域で動作が期待される固体中の単一Er欠陥中心が持つ機構の解明やこれらを量子中継器として活用できないかという課題解決に向けた研究を行っている。 固体中のEr欠陥中心を作製するための最適な条件を見つけることが重要であり、最近の文献などを参考にシミュレーション等を行い、実際にサンプル作製を行った。固体中にEr欠陥中心の作製を行うとき、様々なイオン注入量で行い、Er欠陥中心を作製していたが、イオン注入時の温度も調整することで作製した。作製したサンプルの表面が熱処理により炭化されたり、作製過程で表面に汚れが生じたりするため熱混酸を含めていくつかの洗浄方法でサンプル表面の洗浄を行った。作製した発光に関しての光特性評価のためのシステムの改善、また、サンプルの発光評価を行った。イオン注入時に温度調整することで欠陥中心からの発光が少しだが増強されたことを確認した。今後、イオン注入時の温度調整の最適化を行うことで更なる発光増強が期待されると考えている。 また、光量子情報通信では、光学的操作や欠陥が持つ量子スピンの操作やこれらの測定も要求されるので、これらの要素技術の評価に向けて理論的な検討を進めた。また、他の欠陥中心に関する研究、光量子情報通信では光ファイバのみで様々な操作を行えれば、将来的にはシステム全体のコンパクト化にも繋がるためこれらに関して議論を進め論文の出版を行った。
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