本研究の最終目標である「ガラス転移の解明」に向けて、近年注目を集めている有機分子結晶の電子のガラス(電荷ガラス)を研究対象とし、光パルスを用いたポンププローブ分光により、パルス励起された電子の緩和ダイナミクスが示す偏光特性と温度特性から、電荷ガラスの性質を調査した。その結果、偏光に依存するダイナミクスに注目すると、電子の結晶(電荷秩序)では温度低下と共に信号振幅が増大するのに対し、電荷ガラスではほとんど変化しないことがわかった。これは電子結晶では、空間的に一様に電子が整列しているのに対し、電荷ガラスでは、部分的に電子は整列しているが、非常に短距離で、整列の方向も一様ではないことを示している。
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