研究課題
2020年度から始まったコロナ禍により米国NISTとの共同研究は停止したままである。一部の実験施設ではリモート実験が開始されているが本研究は申請者自身もしくは申請者の指導の下で電流実験用の冷凍機の改造や調整を行う必要があり、現地に赴くことが必須である。しかし、NISTだけでなく以前共同研究を行ったスイスPSI、豪国ANSTOも同じ理由によって現地に赴くことが困難であった。本年度に入ってようやく国内の移動の制限が解消されたため、日本国内での電流中の中性子小角散乱実験遂行の可能性を模索した。1つはJ-PARCにある中性子小角散乱装置であるが、装置分解能の関係で本研究での使用は適切でないことが分かっている。2つ目は昨年の5月から稼働したJRR-3号炉の小角散乱装置であるが、諸事情によって装置の改造を行っての実験は認められなかった。以上のことから本年度も本申請の肝である「独自の改造を施しての小角散乱実験」には残念ながら大きな進展はなかった。この悲壮な状況を打破すべく、次の手段として通常の中性子散乱用の3軸分光器を小角散乱のセッティングで使用することを考えており、JRR-3号炉の冷中性子と熱中性子の装置で今年の実験申請は受理されている。また、研究代表者は放射光施設の装置担当者として2022年度より異動したため、軟X線領域の放射光を用いた研究も視野に入れて研究を展開することも考えている。これらの装置にNISTで行ってきたのと同様な改造を行い、本研究の目標を遂行することを目指したいと考えている。実験結果の解釈及び考察には進展があった。磁気スキルミオンの塑性変形の変動電流に対する周波数依存性は、平板の試料上に格子欠陥によるピン留めが発生する状況で、格子欠陥間の平均的な距離が電流による磁気スキルミオンの駆動距離と比べた時の大きさが関係していると今のところ考えている。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Physical Review B
巻: 105 ページ: L041112-1~6
10.1103/physrevb.105.l041112
Journal of the American Chemical Society
巻: 143 ページ: 19938~19944
10.1021/jacs.1c09954