研究課題/領域番号 |
19K03712
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
横山 毅人 東京工業大学, 理学院, 助教 (30578216)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 超伝導 |
研究実績の概要 |
光は偏光の自由度を持ち、これが光のスピン角運動量を与える。また、光渦と呼ばれるらせん形の波面を持つ光は、偏光に依存しない軌道角運動量を持つ。特に、光渦は近年のレーザー技術の進展により様々な応用が可能になってきている。また、従来の超伝導デバイスでは超伝導の位相の自由度(コヒーレンス)に着目していた。超伝導は位相の他に、軌道角運動量やスピンなどの自由度を持つため、従来の超伝導デバイスでは超伝導の性質を十分に利用しているとは言えない。従って、これらの自由度に着目すれば新奇な物性が発見でき、新機能を示すデバイス応用への道が開かれる可能性がある。 本研究では、軌道及びスピン角運動量を持つ光を超伝導体に照射した場合の超伝導状態を調べた。光による熱効果と角運動量の超伝導体への転写により、超伝導渦糸が誘起されることを予言した。任意の軌道及びスピン角運動量を持つ光に対して渦度がどのように与えられるかも明らかにした。また、秩序パラメータの従うギンツブルグ ・ランダウ方程式を数値的に解き、具体的に現れる超伝導渦糸構造を示した。渦糸の生成を反映した電流測定等を用いて本予言を実験的に検証できることを提案した。 本研究結果を用いれば、通常の磁場による超伝導渦糸が存在しない第1種超伝導体に対しても光照射により人工的に「超伝導渦糸」を生成できることが分かる。また、カイラルp波超伝導体における渦糸にはマヨラナ粒子が存在することが知られている。本研究結果を応用すれば、光によるマヨラナ粒子の制御が可能になると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
期待していた光の軌道及びスピン角運動量の超伝導体への転写現象を明らかにすることができた。さらに予言を検証するための実験も複数提案した。来年度以降の研究計画の基礎となる部分を構築てきたためおおむね順調に研究が進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
超伝導を特徴付けるクーパー対には相対及び重心運動量の2つの運動量がある。これに対応して角運動量も2種類存在する。昨年度に重心座標に対する角運動量の転写現象を明らかにしたため、次に相対座標に対する角運動量の転写現象を予言する。 円偏光を超伝導体に照射した場合の、超伝導体(クーパー対)の対称性を調べる。光のスピン角運動量の超伝導体への転写を明らかにする。研究手法としては準古典グリーン関数法を用いる。さらに、軌道角運動量を持つ光渦を超伝導体に照射した場合の超伝導体の対称性も調べる。光の軌道角運動量の超伝導体への転写を明らかにする。光渦として、ラゲール・ガウシアンビームを考える。このビームを考える理由は共振器やホログラムを用いて実際に発生に成功しており実験的実現性があるためである。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスにより出張がキャンセルになったため。研究を効率的に進めるために書籍を購入する。
|