研究実績の概要 |
CePd2Al8は、10Kで反強磁性転移をしたのち、さらに低温の8.8Kで強磁性転移をする物質であり、その点において珍しいセリウム化合物であると言える。本研究ではこれまでにCePd2Al8を得たフラックス法(自己フラックス法)にて、CeT2X8 (T: 遷移金属, X: Ga, In, Sn, Sbなど)の多数の結晶育成を試みたが、128の組成が得られたのは、当初発見したCePd2Al8のみである。単結晶育成シリーズの参照物質CeT2X8は育成に成功すれば新規物質となるため、結晶構造の決定が難しいという問題もあり難航している。 本研究のような3元化合物をフラックス法で育成する場合では、仕込んだ原料の組成と異なる組成の結晶が得られることがあるが、本研究でも、Ce3Al11,Ce2CuGe6, Ce2PdGe6 の単結晶が得られた。Ce2TX6の系では同じ希土類元素であるPrに置き換えた単結晶も得られている。これらについても関連物質としてシリンダー型圧力セルによる磁化測定を行い、磁気転移温度の圧力変化により研究を行った。この中で216系は斜方晶構造で磁気異方性が強く困難軸の磁化においては3段のメタ磁性が起こる興味深い物質であり、JPS Conference Proceeding 30, 011111 (2020)に発表している。また、Ce3Al11は、6.3Kで強磁性転移した後、3.2Kで反強磁性転移する物質であり、強磁性という点で興味深いため、CePd2Al8とともに圧力下磁化測定を行った。強磁性転移温度は圧力に対してほとんど変化しないが、反強磁性転移温度は圧力に対して敏感で、いったん増加したあと1.2 GPa 程度で消失することがわかった。
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