研究課題
本研究課題では、「Tsai型クラスター」と呼ばれる、100個程度の原子集団を構成要素に持つ「準結晶・近似結晶」に対し、連続的なサイズチューニングを行うことで、ミクロな電子状態と、マクロに発現する物性との関連を明らかにすることを目的とした。特に、Ybイオンを含む価数揺動準結晶と近似結晶に着目し、価数と磁性を制御することを試みる。合わせて、強相関電子系・準結晶分野における未解決問題である「Au-Al-Yb系における非従来型量子臨界現象」の起源の解明に取り組んだ。令和3年度の研究実績の概要は以下の通りである。AuとAlの元素組成比を制御したいくつかのAu-Al-Yb近似結晶を用い、それらのYbイオン価数と磁気特性を精密に測定した。その結果、①Au-Al-Yb近似結晶の格子定数と、それらのYbイオン価数の間には明確な相関があることが分かった。さらにこの相関関係は、これまでに報告した他のYb系Tsai型準結晶・近似結晶の結果とほぼ一致し手いることを明らかにした。こうした格子定数・価数相関は、Tsai型クラスターの持つ、ユニバーサルな性質であることを強く示唆する。②Ybイオン価数と同様、組成比の制御(格子定数の制御)により、磁気特性も大きく変化する事が明らかとなった。量子臨界領域にあるAu-Al-Ybに特有の、磁化率の温度冪乗則は観測されなくなり、代わりにブロードなピークを示すようになった。これは、他のYb系価数揺動物質でもしばしば観測される現象である。以上の結果から、量子臨界現象を示す領域は価数揺動領域に隣接していることが分かり、量子臨界現象の起源が価数揺らぎによるものであることを可能性を強く示唆する。
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固体物理
巻: 56 ページ: 557