研究課題
本研究の目的はタングステンブロンズ類AxWO3(ここでAはアルカリ金属類)の表面やFeSe/SrTiO3界面系などで報告されている高温超伝導のメカニズムを解明することにある。これらの系は常圧下でありながら超伝導転移温度Tcは100K前後となっておりよく知られた高温超伝導体である銅酸化物系で観測されているTcに匹敵している。AxWO3やFeSeはバルク状態でも超伝導を示すが、そのTcは10K程度以下であり表面や界面の効果によりTcが大幅に上昇した可能性が高いと言える。この系の高温超伝導は実験的な検討が進んでおらずまだはっきりしていない。そこで本研究では、これらの超伝導機構の本質はフォノンと電子相関の両者が助け合って高いTcが実現しているものではないかという仮説を立て研究を進めた。そこでまずは第一原理計算により電子格子相互作用定数λを求め、フォノン機構だけを考えたとき、それがTcに対してどれだけ寄与するのかを検討した。その結果、Aの原子としてNaを使ったNaxWO3のバルク系では、Naのドープ量に応じてフォノンの引力が増大しTcもそれにつれて高くなる傾向を示す結果を得た。また電子相関の一種であるプラズマ振動の効果もフォノンと同程度に超伝導に寄与しており、この2つの効果を取り入れることにより、はじめて実験で得られているTcのNaドープ依存性の結果が理論的に再現できることが分かった。これらの成果は論文としてまとめすでに公表済みである。またこの研究に関連してソーダライト構造を持つ炭素系の研究も進めた。この系はフォノンの効果のみで高いTcを持つ系として知られている水素化合物系と同じ結晶構造を持っており、大変興味深く今後、さらなる研究の進展が望まれる系である。第一原理計算によりこの系のTcの圧力依存性を系統的に調べた成果を論文としてまとめすでに公表ずみである。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件)
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