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2020 年度 実施状況報告書

大規模系に適用可能な第一原理構造探索法の開発とその応用

研究課題

研究課題/領域番号 19K03717
研究機関大阪大学

研究代表者

下司 雅章  大阪大学, ナノサイエンスデザイン教育研究センター, 特任准教授(常勤) (70397660)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード構造探索 / 第一原理計算 / 高圧相
研究実績の概要

大規模系への適用を目指してOne-shot Enthalpy used Random Search(OSE-RSS)法を開発し、これと空間群を網羅して初期構造を生成し探索漏れをなくして構造探索を行う方法を開発してきた。対称性の高い構造は網羅して初期構造を生成するが、低対称な構造は数が多すぎるのと、数学的分類では異なっても実際の構造としては実際上同等のものが多数あり、原子数が4個程度なら計算可能であるがそれ以上では実際の計算は困難である。また、構造緩和は対称性を仮定せずに行うために、その過程で低対称な構造も含まれているため、この2つの手法を互いに補い合うように使う方法として開発した。つまり、対称性の高い構造は空間群を網羅して初期構造を生成し、低対称な構造はOSE-RSS法で補うことにする。あるいは、OSE-RSS法で実施した中の特に重要な部分を空間群を網羅して補強するとも言える。
これをTeの高圧相に適用し、実験でbcc構造からfcc構造とdhcp構造の共存相に転移し、やがてdhcp構造が消えてfcc構造になる結果を再現し、bccからfccには正方晶歪によって転移することも明らかにした。Sについてもbeta-Po型菱面体晶の次の構造が過去の計算では単純立方晶であると報告されたが、本研究で実施したところそれは最安定ではなく、直接bcc構造に転移することも明らかにした。Snの高圧相のbct構造からbcc構造に転移する間に体心斜方晶構造が実験では報告されているが、計算では安定ではないことも明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでにランダムサーチを土台としたOSE-RSS法と空間群を網羅して初期構造を生成する方法の組み合わせで構造探索を行う方法が、高精度かつ効率的であることが分かってきた。特に高圧相の探索では準安定構造とのエネルギー比較が非常に計算精度に依存することも分かってきた。第一原理計算の計算精度を決めるカットオフエネルギーとk点サンプリングは、構造を比較する上での必要最低限の値を決めるのが基本であるが、通常のPCクラスターで利用できるメモリや記憶容量では実行が困難な場合が、原子数が単位胞に4個の場合でもあることが分かってきた。物質は高圧にすると金属化するので、多くのk点が必要だと考えてカットオフエネルギーをあまり大きくとらないことがあったが、Snではむしろカットオフエネルギーのほうが重要で、先行研究の値では構造を再現できていないことも分かった。カットオフエネルギーは並列化によって計算時間をあまり削減できないために、大規模系への適用を困難にする。メモリの使用量は第一原理計算パッケージの根幹の改良が必要なため、事実上出来る範囲の計算をするか、メモリ使用量が少なくて済むパッケージを選ぶかになる。
さらに、多くの第一原理計算を用いた構造探索は擬ポテンシャル法を用いているが、最も高精度な全電子計算法であるFLAPW法の結果と比較みると、計算精度が十分でも擬ポテンシャルが高圧ではFLAPW法と一致しない事例を発見した。擬ポテンシャルは常圧付近ではFLAPW法と一致するように作られているが、高圧までの一致は十分に確認されていない場合も少なくなく、それを用いては正しい計算は行えない。また、目的の議論が出来ない程度の不一致なのかもそれぞれで異なるため、より一層慎重な取り扱いが必要である。

今後の研究の推進方策

必要十分な計算精度と擬ポテンシャルのFLAPW法との一致の程度を確認しながら構造最適化を行うには、より少ないサンプル数で最適値に到達する必要があるので、OSE-RSS法は有効な方法である。この方法では単位胞に16原子やそれ以上でも出来ている。空間群を用いる方法も、低対称構造である単斜晶や斜方晶を除けば単位胞に8原子や16原子でも実施出来ている。両者の適切な組み合わせで互いに補完しあいながら実施することで単位胞に大きな原子数でも扱っていける。高圧でのいくつかの物質を調べつつ、これまでの高圧で高い対称性の構造から低圧の対称性の低い構造の再現や探索にも進めていき、当初の目的である構造探索法の常圧での実施の適切な指針を与える結果を出していく。そして、二元系の物質にも適用していく。

次年度使用額が生じた理由

コロナウイルス感染拡大のために学会がオンラインとなって旅費が不要になり、打ち合わせなども中止となったため。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (3件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] First-Principles Study for High-Pressure Tellurium near a Transition from bcc to fcc2020

    • 著者名/発表者名
      Geshi Masaaki、Funashima Hiroki
    • 雑誌名

      Journal of the Physical Society of Japan

      巻: 89 ページ: 124603~124603

    • DOI

      10.7566/JPSJ.89.124603

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 第一原理計算による高圧カルコゲンのpost-bcc構造の探索2021

    • 著者名/発表者名
      下司 雅章、舩島 洋紀
    • 学会等名
      日本物理学会 第76回年次大会
  • [学会発表] 第一原理計算による高圧テルルのbcc-fcc構造相転移と準安定構造dhcpの存在性2020

    • 著者名/発表者名
      下司 雅章、舩島 洋紀
    • 学会等名
      第61回高圧討論会
  • [学会発表] Snの高圧相の第一原理計算2020

    • 著者名/発表者名
      下司 雅章、舩島 洋紀
    • 学会等名
      日本物理学会2020年秋季大会
  • [備考]

    • URL

      https://researchmap.jp/geshi/published_papers

  • [備考]

    • URL

      http://phoenix.mp.es.osaka-u.ac.jp/~geshi/works.html

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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