• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実施状況報告書

超音波を用いた結晶構造がもつカイラリティとフラストレーションによる多極子物性研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K03719
研究機関広島大学

研究代表者

石井 勲  広島大学, 先進理工系科学研究科(先), 准教授 (20444713)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード電気四極子 / カイラリティ / 幾何学的フラストレーション
研究実績の概要

本研究では,物質の結晶構造がもつ特異性であるカイラリティ(対掌性)や幾何学的フラストレーションに起因した電気四極子のカイラルらせん秩序や,フラストレーション効果による電気四極子のゆらぎと量子ゆらぎとが相まった量子臨界現象の解明を目指す。多極子による電子状態に富む,結晶構造のカイラリティや幾何学的フラストレーションをもつ物質群に着目し,電気四極子の良いプローブである超音波実験を駆使して系統的な研究を行う。
令和二年度は,研究対象物質の一つであるカゴメ格子状化合物DyNiAlの超音波実験において弾性ソフト化を観測した。得られたデータの量子力学的解析から,このソフト化が電気四極子に起因することを明らかにするとともに,その電子状態を明らかにした。磁場中実験から異なる磁場方向での磁場誘起相転移の存在を明らかにし,実験結果と計算結果から,それぞれ異なる多極子に起因した相転移であることを明らかにした。この結果は,磁場の方向によって多極子の秩序状態がスイッチすることを示唆する。研究成果は学術論文として発表した。
希土類を置換したHoNiAlやErNiAlの超音波実験も行い,両物質で電気四極子に起因した弾性ソフト化を観測した。この他に希土類化合物NdOs2Zn20,NdIr2Zn20ではf電子に起因した磁場に依存しない弾性ソフト化を見出した。その起源については現在検討中であり,来年度以降の実験結果とも併せて解明を目指す。また,カゴメ格子化合物Tb3Ru4Al12の電子状態を明らかにし,学術論文として公表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

COVID-19問題があり,予定していたドイツ国立ドレスデン強磁場研究所での出張実験は行えなかったものの,国内実験を精力的に行ったことにより,おおむね順調に研究は進んでいる。具体的には,研究対象物質の一つの電子状態を明らかにし,多極子による磁場誘起相転移の秩序状態が磁場によりスイッチすることを見出した。他の希土類化合物でも物性への多極子の影響を見出した。

今後の研究の推進方策

カイラリティに関しては,カイラルらせん磁気秩序が報告されているYbNi3Al9やYb(Ni1-xCux )3Al9の超音波実験を行い,カイラリティと多極子が絡んだ物性研究を行う。幾何学的フラストレーションに関しては,COVID-19問題による状況が改善され次第,令和二年度に行えなかったドイツ国立ドレスデン強磁場研究所でのDy3Ru4Al12やDyNiAlの超音波実験を行って弾性異常の起源を解明するとともに,磁場誘起多極子秩序の臨界磁場近傍の物性を明らかにする。また,希土類を置換した化合物についても国内外で超音波実験を行い,系統的研究を進める。

次年度使用額が生じた理由

令和二年度に使用可能な直接経費の範囲内で研究の遂行に必要な消耗品を購入した。COVID-19問題により出張が制限されたため,出張に計上した経費は使用しなかった。上記理由と必要経費の節約にも努めた結果,次年度使用額が生じた。令和三年度の経費と合わせて物品費および旅費として使用する。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (9件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] ドイツ国立ドレスデン強磁場研究所(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      ドイツ国立ドレスデン強磁場研究所
  • [国際共同研究] チェコ科学アカデミー(チェコ)

    • 国名
      チェコ
    • 外国機関名
      チェコ科学アカデミー
  • [雑誌論文] Magnetic transition due to the inter-singlet spin-exchange interaction and elastic softening by the interplay of electric quadrupoles in the distorted kagome lattice antiferromagnet Tb3Ru4Al122020

    • 著者名/発表者名
      I. Ishii, T. Mizuno, S. Kumano, T. Umeno, D. Suzuki, Y. Kurata, T. Suzuki, D. I. Gorbunov, M. S. Henriques, and A. V. Andreev
    • 雑誌名

      Phys. Rev. B

      巻: 101 ページ: 165116(7)

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.101.165116

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 超音波によるYbRhGeの結晶場効果と磁場中相図の研究2021

    • 著者名/発表者名
      石井勲, 野口慈仁, 荒木幸治, 加藤健一, 鈴木孝至
    • 学会等名
      日本物理学会 第76回年次大会
  • [学会発表] DyNiAlにおける磁場誘起相転移2021

    • 著者名/発表者名
      鈴木大地, 石井勲, 梅野寛大, 蔵田湧紀, 和田侑樹, A. V. Andreev, 宮田敦彦, D. I. Gorbunov, S. Zherlitsyn, J. Wosnitza, 鈴木孝至
    • 学会等名
      日本物理学会 第76回年次大会
  • [学会発表] 超音波によるEr3Ru4Al12の磁気相転移と磁場中相図の研究2021

    • 著者名/発表者名
      蔵田湧紀, 石井勲, 梅野寛大, 鈴木大地, 和田侑樹, A. V. Andreev, D. I. Gorbunov, M. S. Henriques, 鈴木孝至
    • 学会等名
      日本物理学会 第76回年次大会
  • [学会発表] TmFe4CoAl7における逐次相転移の磁場中弾性応答2021

    • 著者名/発表者名
      和田侑樹, 石井勲, 梅野寛大, 鈴木大地, 蔵田湧紀, A. V. Andreev, D. I. Gorbunov, 鈴木孝至
    • 学会等名
      日本物理学会 第76回年次大会
  • [学会発表] カゴメ格子磁性体Tb3Ru4Al12の磁場中弾性率と結晶場効果II2020

    • 著者名/発表者名
      石井勲,水野拓陽,梅野寛大,鈴木大地,蔵田湧紀,和田侑樹,A. V. Andreev,D. I. Gorbunov,M. S. Henriques,鈴木孝至
    • 学会等名
      日本物理学会 2020年秋季大会
  • [学会発表] 超音波分光法を用いたカゴ状化合物NdRh2Zn20の相転移とラットリングに関する研究Ⅱ2020

    • 著者名/発表者名
      梅野寛大,石井勲,鈴木大地,和田侑樹,蔵田湧紀,山本理香子,鬼丸孝博,鈴木孝至
    • 学会等名
      日本物理学会 2020年秋季大会
  • [学会発表] DyNiAlの磁場中弾性率と四極子応答III2020

    • 著者名/発表者名
      鈴木大地,石井勲,梅野寛大,蔵田湧紀,和田侑樹,A. V. Andreev,宮田敦彦,D. I. Gorbunov,S. Zherlitsyn,J. Wosnitza,鈴木孝至
    • 学会等名
      日本物理学会 2020年秋季大会
  • [学会発表] Er3Ru4Al12における磁気相転移の弾性応答2020

    • 著者名/発表者名
      蔵田湧紀,石井勲,梅野寛大,鈴木大地,和田侑樹,A. V. Andreev,D. I. Gorbunov,M. S. Henriques,鈴木孝至
    • 学会等名
      日本物理学会 2020年秋季大会
  • [学会発表] 超音波によるTmFe4CoAl7の逐次相転移の研究2020

    • 著者名/発表者名
      和田侑樹,石井勲,梅野寛大,鈴木大地,蔵田湧紀,A. V. Andreev,D. I. Gorbunov,鈴木孝至
    • 学会等名
      日本物理学会 2020年秋季大会
  • [備考] 広島大学 低温物理学研究室

    • URL

      https://ltlabs.hiroshima-u.ac.jp/

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi