研究課題/領域番号 |
19K03731
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
長谷 泉 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (00357774)
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研究分担者 |
柳澤 孝 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 上級主任研究員 (90344217)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フラットバンド / 強磁性 / パイロクロア酸化物 / パイロクロア格子 / トポロジカル絶縁体 |
研究実績の概要 |
本研究を通じて得られた当該年度の成果は主に以下の2点である。 (1)Tl2Nb2O7をはじめとする6種のフラットバンド化合物A2B2O7 (A=Sn,Pb,Tl; B=Nb,Ta)について第一原理バンド計算を行い、キャリアドープによって強磁性が発現しうることを提案した。ポテンシャル項にLDAとGGAのどちらを入れても強磁性が安定になること(すなわち強磁性が微細なパラメタによらず安定な状態であること)、また磁気モーメントの大きさが圧力にほとんどよらないことを示した。これらの物質はいずれも磁性元素を含まないため、「非磁性元素による強磁性」という興味深い物性が期待できる。 (2)上記6種の化合物のトポロジカルな性質を調べた。具体的には、スピン軌道相互作用によるΓ点でのエネルギー準位の分裂の様子から、Guo-Franz模型を用いてZ2指数の判定を行った。その結果、上記6種の化合物のうちSn2Nb2O7のみがドーピングによって強いトポロジカル絶縁体になり得ることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最初の3次元フラットバンド物質Sn2Nb2O7の発見後、演繹的にフラットバンド模型を構築して、フラットバンドを持つ必要条件を既に見出していた。そのため、そこからの発展は「概ね順調」と言って良いものと思われる。さらに高精度の数値計算を行うことで、強磁性状態の安定性や、スピン軌道相互作用によるトポロジカルギャップなどについて考察を行うことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
(1)フラットバンドを持つパイロクロア酸化物A2B2O7は、A原子の最外殻軌道がs軌道であり、かつそこに電子が1個から2個入る必要がある。そのためA原子の種類は限られているが、B原子についてはまだ変化させる余地がある。 また、これまで調べた物質では価電子帯と伝導帯の間に大きなバンドギャップがあり、そのため、強磁性を得るためのキャリアドープが実験的に難しいという課題があった。伝導帯を下げてギャップを閉じて行くことでキャリアドープ問題を解決できないかと現在考えている。 (2)トポロジカル絶縁体についても、これまで蓄積して来たデータと上記手法による新物質の探索によって、「バンド反転」を起こす物質を新たに提案して行きたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響で学会などの出張が中止になり、また新規計算機サーバーの購入も見送ったため、次年度使用額が生じた。 次年度使用計画としては、新規計算機サーバーの購入や、もし情勢が落ち着けば国際学会への参加を考えている。
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