研究課題
昨年度までの研究で、一次元のテンソルネットワークを用いた有限サイズ二次元系の有限温度計算手法をある程度確立し、キタエフ模型を熱ホール伝導度の解析を中心に、未解明の物理の解析にこの手法が活用できることも分かってきた。今年度は、この手法の応用を進めるとともに、研究開始当初から検討していた無限系へのテンソルネットワーク近似の適用について、キタエフ模型をターゲットとして新しい方向性を探索した。ハニカム格子の格子点上にだけテンソルを配置してつなぐ、通常のテンソルネットワーク表現と、格子点に加えて六角形の中心にもテンソルを配置する表現との計算精度を比較し、後者の方が低温の物性をより高精度に再現できることを明らかにした。研究期間全体を通して、二次元フラストレート磁性体の有限温度物性を、密度行列のテンソルネットワーク近似で計算する手法の開発と高精度化を行い、無限系に対する手法と、境界を持つ有限系に対する手法の2種類の方法を確立した。特に後者の有限系の方法をキタエフ模型に適用することで、スピン液体状態に磁場を印加した際に期待される、温度勾配とは直交した方向に熱が流れる熱ホール伝導について、詳細な解析を行うことに成功した。さらに、α-RuCl3などの実際の物質にも存在していると考えられてる、非対角の相互作用の影響も検討し、これらの相互作用の符号により、熱ホール伝導度が大きく影響を受けることを明らかにした。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件)
Computer Physics Communications
巻: 279 ページ: 1084371 - 08437
10.1016/j.cpc.2022.108437